【獣医師監修】ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)の症状と予防法

咳とくしゃみが特徴の、ケンネルコフ。 成犬では軽症のケースもありますが、感染力が高く、空気感染をして広がりやすいのがやっかいな病気です。 子犬や老犬では、命に危険が及ぶ可能性も。 愛犬が感染源にならないためにも、症状や予防法を頭に入れておきましょう。

【獣医師監修】ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)の症状と予防法
出典 : pixta_45767022

ケンネルコフの原因

ケンネルコフの原因

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ケンネルコフは、数種類のウイルスや細菌などが原因となり、単独感染や複数感染で起こる病気です。
ケンネル(犬舎)という名がついている理由は、感染場所として、ペットショップや保護施設などといった複数の犬がいるところで多く発症するからです。

ケンネルコフを引き起こす主な原因となるウイルスとしては、イヌパラインフルエンザウイルスとイヌアデノウイルスⅡ型が知られています。
さらに、気管支敗血症菌(ボルデテラ菌)も主因のひとつで、前述のウイルスなどと複合感染をすると重症化する恐れがあると考えられています。

かつては、ジステンパーウイルスも関係すると考えられていました。
確かに、ジステンパーに感染しても咳の症状が出ます。
けれども、ケンネルコフはジステンパーとは違う気管気管支炎で、がんこな咳が特徴です。

ケンネルコフの初期症状から末期症状まで

ケンネルコフの初期症状から末期症状まで

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伝染性気管気管支炎とも呼ばれるケンネルコフは、病名のとおり咳が主症状です。
原因となるウイルスや細菌のうち、ひとつにしか感染しないと軽症になるケースもあります。
たとえばイヌパラインフルエンザの単独感染の場合、発熱もなく、食欲もふだんどおり。
突然に笛を鳴らすような咳が始まり、くしゃみをすることがある程度で、発症から6~8日間かけてウイルスが排出されると完治するでしょう。

ケンネルコフのほとんどは、3~10日の潜伏期間を経て発症します。
特徴的な症状は、ガチョウが鳴くような高音の短い咳。
興奮時や運動後、気温の変化などによって咳はひどくなります。
元気でも、吐くような様子を見せる例や、微熱を伴う例も少なくありません。
他のウイルスや細菌と混合感染をした場合、膿の混じる鼻汁を出したり、くしゃみをしたり、食欲や元気がなくなったりします。
重症化すると、高熱や肺炎といった症状を起こし、抵抗力の弱い子犬や老犬、ほかの病気にかかっていて免疫力が落ちている成犬では死亡するケースもあります。

ケンネルコフの検査と診断方法

ケンネルコフの検査と診断方法

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ケンネルコフを疑って動物病院を訪れる場合、飼い主さんは以下を伝えるようにしましょう。

・いつから咳やくしゃみなどが始まったか
・症状が現れる数日~2週間以内に、トリミングサロン、ペットホテル、ドッグラン、オフ会など、多数の犬が集まる場所を訪れなかったか
・多頭飼いをしている場合、ほかに咳だけという軽症ののちに自然治癒をした犬がいないかどうか
・混合ワクチンを最後に接種したのはいつか

それらの問診ののち、獣医師は症状を確認するとともに、レントゲン検査や、必要に応じてウイルスや細菌やマイコプラズマの分離・同定検査を行います。

ケンネルコフの治療法

ケンネルコフの治療法

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ケンネルコフはその原因によって、治療法が異なります。
パラインフルエンザやイヌアデノウイルスⅡ型に感染していた場合、これらに効く薬はありません。
対症療法として、咳止めや気管支拡張剤を用いるケースが多いでしょう。
細菌とマイコプラズマが原因だとわかれば、抗生物質が有効です。
気管支拡張剤とともにネブライザーで抗生剤を吸入させると即効性が期待できます。

発症中の犬は、咳やくしゃみでほかの犬に空気感染をさせてしまうため、多頭飼いの場合は治療中は隔離をする必要があります。
飼育環境はこまめに換気を行ってください。
もちろん、ほかの犬が多く集まる場所への出入りは控えましょう。
人間にうつることはありません。

ワクチン接種で予防を

ワクチン接種で予防を

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最悪のケースでは愛犬の命を奪うこともある感染症なので、予防が肝心です。
イヌパラインフルエンザとイヌアデノウイルスⅡ型に関しては、ジステンパーやパルボウイルスなどのコアワクチンと呼ばれる重要度の高いワクチンとの混合ワクチンを打つことで、予防が可能です。
ただし、イヌパラインフルエンザとイヌアデノウイルスⅡ型の両方を含む混合ワクチンは、5種~9種混合ワクチンになります。

抗生物質での治療が可能な細菌やマイコプラズマに関しては、ワクチンでの予防はできません。
けれども、ケンネルコフに有効なワクチンを定期接種して抗体を獲得していれば、混合感染による重症化は免れられる確率が高まります。
また、人のインフルエンザ同様、ワクチン接種をしていても、軽症のことが多数ですがケンネルコフにかかることがあると覚えておいてください。

混合ワクチンは、母乳により母体移行免疫をどれほど獲得できたかにもよりますが、子犬期は生後60日前後に初回接種をしたのち、合計2~3回の追加接種をします。
成犬になったら、1~3年ごとの追加接種を、かかりつけ医と相談の上、行いましょう。

そのほか、ケンネルコフは風邪の総称とも言える病気なので、病中病後など愛犬の免疫力が下がってそうなときは犬が集まる場所へ出かけるのは避けるなどの予防策も柔軟に行ってください。

まとめ

まとめ

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ケンネルコフは原因となるウイルスや細菌が複数存在するため、何度か罹患を繰り返す可能性のある感染症です。
乾いた高音の咳、くしゃみ、詰まったものを吐き出すかのような様子などが見られたら、ほかの犬にうつさないためにも、早めに動物病院へ。
定期的なワクチン接種などでの予防も重要です。

監修者情報

箱崎 加奈子(獣医師)

箱崎 加奈子(獣医師)

・学歴、専門分野 麻布大学獣医学部獣医学科 ・資格 獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルアロマセラピスト ・職業 獣医師 ペットスペース&アニマルクリニックまりも ・所属団体、学会 一般社団法人女性獣医師ネットワーク(代表理事) ・著書(一部) 1 最新版 愛犬の病気百科 著者名: 愛犬の友編集部 編 2 愛犬をケガや病気から守る本 著者名: 愛犬の友編集部 編 ・職業上でのペットとの関わり 普段犬猫の診察をしています。 飼育放棄や動物愛護センター収容の犬猫の保護譲渡活動をしています。 ・飼っている動物 シーズー ・ペット歴 ハムスター、うさぎ、ハリネズミ、犬(シーズー、ヨークシャテリア) ・ペットへの想い 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。 現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。 毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。 プライベートでは一児の母。 愛犬はシーズー。 家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています ・ペットに関するエピソード シーズー2頭、ヨークシャの全部で3頭の多頭飼いをしていました。 2頭は天寿を全うし、今はシーズーの澪(みお)が1頭です。 動物を飼育する習慣のない家庭に育ちましたので、この仕事に就こうと決めた時に初めて犬を飼いました。 犬初心者からトリマー、トレーナー、獣医と、飼い主目線で自分の愛犬に必要なスキルを身につけました

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ライタープロフィール

臼井 京音 Kyone Usui

臼井 京音 Kyone Usui

フリーライター、ドッグジャーナリスト 【経歴】 日本文学を専攻しバックパッカーもしていた大学卒業後、旅行ガイドブックの編集プロダクション勤務を経て、フリーライターに。30代前半でオーストラリアにドッグトレーニング留学をしたのち、現在はドッグジャーナリスト。 2007年から2017年まで東京都で“犬の幼稚園Urban Paws”の園長&家庭犬トレーニングインストラクターとしても活動。 東京都中央区 動物との共生推進員。 【執筆歴】 小学生時代から愛読していた雑誌『愛犬の友』をはじめ、多数の書籍や媒体で犬をはじめペットに関する執筆活動を行う。Webサイト「ニッポン放送ニュースオンライン」にて『ペットと一緒にby臼井京音』連載中。 著書:タイの犬の写真集『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本』 これまでの執筆・編集歴は、毎日新聞の「臼井京音の幸せ犬ぐらし」連載コラム、AllAbout「犬の健康」、『週刊AERA』、季刊誌『BUHI』、書籍『フレンチブルドッグ生活の家計簿』、書籍『きみとさいごまで』、書籍編集『愛犬をケガや病気から守る本』、書籍編集『最新版 愛犬の病気百科』など。 【ペット歴】 小学生時代からシマリス、カメ、ミジンコ、カエル、ハムスター、メダカ、最初の愛犬ヨークシャー・テリアなどと生活し、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らしています。 室内外で保護犬やブリーダーから迎えた犬を多頭飼育していた祖父母や、獣医師の叔父、シャム猫を溺愛していた祖母の影響で、生まれた時からずっと動物に囲まれてきました。人と動物のよりよい関係を願い、日々取材と執筆を行っています。

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