【獣医師監修】愛犬の便から白い虫?回虫症(おなかの虫)の症状や予防法は?

犬や猫に寄生する回虫(おなかの虫)は日本でも全国的に発生が見られる寄生虫です。回虫症になると愛犬の便からミミズを白くしたような成虫が排出されます。今回は、犬や人に感染した場合の症状や予防法などをご紹介。回虫についての知識を得て、もし見つけても慌てずに対処できるようにしましょう。

【獣医師監修】愛犬の便から白い虫?回虫症(おなかの虫)の症状や予防法は?
出典 : pixta_56924317

犬回虫とは?

回虫とは

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回虫は線虫類に属しています。線虫の特徴は、オスとメスが存在し、交尾をして卵を産むこと。
回虫は世界的に多数の種類が分布していて、日本の犬には主に犬回虫が寄生します。
多くないケースですが、猫を宿主としやすい猫回虫が犬に寄生したり、海外から渡来した犬に犬小回虫が寄生していることもあります。

ひも状をしている回虫は白色か黄白色で、犬回虫の成虫の全長はメスが5~20cmほど、オスが4~10cmほど。
犬小回虫の成虫は、全長7~10cmほどになります。

犬の体内で産卵された球形の虫卵は、犬の便とともに排出されます。
外界に出た卵は発育し、内部で幼虫が形成されていきます。
その幼虫形成卵を犬が経口的に体内に取り込むと、回虫に感染します。
ネズミなどの待機宿主の体内では、回虫は幼虫のままで成虫になることはありません。
けれども、そのネズミなどを捕食した犬の体内に幼虫が入ると、一部は幼虫のまま犬の体のあらゆるところにとどまり、その他は犬の小腸に寄生して成虫になります。

犬回虫の幼虫は、母犬から子犬へ、胎盤や乳汁をとおしても感染します。
そのため、繁殖の現場で母体への駆虫がされていないと、生まれながらにして子犬が犬回虫に感染していることがあります。
ペットショップで犬回虫に感染している子犬を連れ帰り、多頭飼育をしていると他の犬に感染を広げてしまう例もめずらしくありません。

犬回虫は人にも感染する?

犬回虫は人間にうつる

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犬回虫は人に感染して回虫症を引き起こす、人獣共通感染症のひとつ。
人では、幼児への感染報告が多いようです。
犬の便で排出された虫卵は、犬の体毛に付着していることもあります。
外界のあらゆるところに潜んでいるそうした幼虫形成卵が人の口に入ると、発熱、せき、肺炎、肝臓が腫れるといった症状が現れることがあります。
人が目をこすった際に、指先についていた成虫形成卵や幼虫が目に入り眼症状を起こす例もあります。
最悪の場合は、回虫症で失明をしてしまうことも。
犬回虫は、数多い寄生虫の中でも決してあなどることはできません。

犬が犬回虫(回虫症)に感染した場合の症状

犬が犬回虫(回虫症)に感染した場合の症状

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成犬が犬回虫に寄生された場合は、無症状のケースも少なくありません。
けれども、抵抗力の弱い子犬が多数の犬回虫の感染を受けた場合、深刻な症状に陥り命を落とすこともあるので注意してください。
回虫症の主な症状は、下痢です。
胃腸炎の症状を示すため、嘔吐も症状のひとつで、食べ物と一緒に犬回虫を吐くこともあります。
子犬の腹部がぽっこりと膨らんでいる様子が確認できたり、発育不良になって痩せてくるのがわかることもあるでしょう。
下痢による脱水症状にも注意が必要です。
犬回虫が小腸に詰まると、腸閉塞により死亡に至るケースもあります。

うんちに白いものを確認したら獣医師に相談!

回虫の検査と診断方法

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回虫は早期に発見をして、早期に駆虫をするのが重要となります。
愛犬に粘液性の下痢嘔吐が見られたら、新しい糞便と嘔吐物を動物病院に持参して、寄生虫の有無を確認してもらいましょう。
もし新しい便でなくても糞便内にひも状の回虫が混じっていたら、それも採取して持参してください。
獣医師には、診察時に以下のことを伝えるようにします。

・粘液便が始まった時期
下痢のほかに嘔吐などがあるか
・お腹が痛そうな様子を愛犬が見せているか
・愛犬に元気はあるか
・子犬を迎えた場所とその環境
・犬が多数いる場所を最近訪れたかどうか

問診や視診などをとおして、獣医師が犬回虫に感染している可能性があると判断した場合は、糞便検査をします。
糞便からは、成虫が混じっていなくても回虫の虫卵が検出されます。

回虫症の治療法

回虫症の治療法

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回虫症の治療には、駆虫薬の投与が必要です。
駆虫薬には、フィラリアの予防薬として使用されることも多いミルベマイシンをはじめ、フェバンテル、セラメクチンなど数種類があり、経口や注射で投与します。
投薬は1回だけで完了するケースは少なく、駆虫の状況に応じて追加投与されることになるでしょう。
回虫症を完治させるまで、獣医師の指示に従って通院をしてください。
なお、市販されている駆虫薬もありますが、愛犬への寄生虫の種類の特定が不可欠なことと、安全面から、動物病院で検査と治療薬の処方を受けるようにしましょう。
胃腸症状や脱水症状の緩和や、栄養補給のために、対症療法も行います。

回虫の寄生を予防するには?

回虫の寄生を予防するには

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回虫の寄生を予防するために重要なのは、犬の糞便を速やかに片づけること。
糞便に排出された虫卵は、内部に幼虫が形成されるまでは感染力がありません。
そのため、すぐに糞便を処分するのが最善の予防法になるのです。

回虫の卵は高温で死滅するので、熱湯消毒も有効です。
とはいえ、愛犬のトイレや食器やおもちゃ類は熱湯消毒が可能ですが、住環境すべてを熱湯で消毒をするのは不可能でしょう。
市販されている消毒スプレーなどでは、回虫の卵を死滅されることはできません。
やはり糞便の速やかな処理にくわえて、こまめに掃除をして、なるべく住環境を衛生的に保つよう心がけたいものです。

愛犬を繁殖する予定がある場合は、母子感染を防ぐために、メス犬は交配前に獣医師と相談のうえ駆虫薬を投与しておきましょう。

犬回虫のまとめ

まとめ

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人間にも感染する犬回虫は、要注意の寄生虫。
子犬を迎える際は、母犬への駆虫薬の投与が終わっているかどうかも確認できれば安心です。
万が一寄生虫に感染していた場合に、他の犬や家族に感染を広げない為にも、愛犬に下痢の症状が見られたら、すぐに動物病院を受診することが大切です。

監修者情報

箱崎 加奈子(獣医師)

箱崎 加奈子(獣医師)

・学歴、専門分野 麻布大学獣医学部獣医学科 ・資格 獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルアロマセラピスト ・職業 獣医師 ペットスペース&アニマルクリニックまりも ・所属団体、学会 一般社団法人女性獣医師ネットワーク(代表理事) ・著書(一部) 1 最新版 愛犬の病気百科 著者名: 愛犬の友編集部 編 2 愛犬をケガや病気から守る本 著者名: 愛犬の友編集部 編 ・職業上でのペットとの関わり 普段犬猫の診察をしています。 飼育放棄や動物愛護センター収容の犬猫の保護譲渡活動をしています。 ・飼っている動物 シーズー ・ペット歴 ハムスター、うさぎ、ハリネズミ、犬(シーズー、ヨークシャテリア) ・ペットへの想い 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。 現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。 毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。 プライベートでは一児の母。 愛犬はシーズー。 家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています ・ペットに関するエピソード シーズー2頭、ヨークシャの全部で3頭の多頭飼いをしていました。 2頭は天寿を全うし、今はシーズーの澪(みお)が1頭です。 動物を飼育する習慣のない家庭に育ちましたので、この仕事に就こうと決めた時に初めて犬を飼いました。 犬初心者からトリマー、トレーナー、獣医と、飼い主目線で自分の愛犬に必要なスキルを身につけました

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ライタープロフィール

臼井 京音 Kyone Usui

臼井 京音 Kyone Usui

フリーライター、ドッグジャーナリスト 【経歴】 日本文学を専攻しバックパッカーもしていた大学卒業後、旅行ガイドブックの編集プロダクション勤務を経て、フリーライターに。30代前半でオーストラリアにドッグトレーニング留学をしたのち、現在はドッグジャーナリスト。 2007年から2017年まで東京都で“犬の幼稚園Urban Paws”の園長&家庭犬トレーニングインストラクターとしても活動。 東京都中央区 動物との共生推進員。 【執筆歴】 小学生時代から愛読していた雑誌『愛犬の友』をはじめ、多数の書籍や媒体で犬をはじめペットに関する執筆活動を行う。Webサイト「ニッポン放送ニュースオンライン」にて『ペットと一緒にby臼井京音』連載中。 著書:タイの犬の写真集『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本』 これまでの執筆・編集歴は、毎日新聞の「臼井京音の幸せ犬ぐらし」連載コラム、AllAbout「犬の健康」、『週刊AERA』、季刊誌『BUHI』、書籍『フレンチブルドッグ生活の家計簿』、書籍『きみとさいごまで』、書籍編集『愛犬をケガや病気から守る本』、書籍編集『最新版 愛犬の病気百科』など。 【ペット歴】 小学生時代からシマリス、カメ、ミジンコ、カエル、ハムスター、メダカ、最初の愛犬ヨークシャー・テリアなどと生活し、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らしています。 室内外で保護犬やブリーダーから迎えた犬を多頭飼育していた祖父母や、獣医師の叔父、シャム猫を溺愛していた祖母の影響で、生まれた時からずっと動物に囲まれてきました。人と動物のよりよい関係を願い、日々取材と執筆を行っています。

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