【獣医師監修】鉤虫(こうちゅう)という寄生虫に愛犬が感染したら? 対策や予防法は?

人間にもうつる可能性がある、鉤虫。 愛犬への寄生が疑われたら、早期に駆虫を開始して、感染が広がらないように注意しましょう。 治療法や対策をお伝えします。

【獣医師監修】鉤虫(こうちゅう)という寄生虫に愛犬が感染したら? 対策や予防法は?
出典 : pixta_55913401

鉤虫とは

鉤虫とは

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鉤虫は線虫類に属する寄生虫で、世界で多くの種類がいます。
日本では、犬に寄生する犬鉤虫と、猫に寄生する猫鉤虫の2種類が一般的で、それらは人にも感染します。
かつては日本でもよく見られた鉤虫ですが、近年は動物病院でも感染を確認することは多くありません。
けれども、ブリーダーの犬舎や動物の保護施設(シェルター)などでは、現在でも集団発生が見られるケースがあるので注意が必要です。

犬鉤虫は肉眼では糸くずのように見えるでしょう。成虫の長さは、約1~2cm。
交尾をして産卵するタイプの寄生虫で、オスよりもメスのほうが大きく成長します。
吸血行動をするのも、特徴のひとつ。
白色をしている体は、吸血後では赤色っぽく見えることもあります。

寄生した犬の体内でメスの犬鉤虫が産んだ卵は、糞便に排出されて外界へ。
卵から孵化した幼虫は主に土の中で暮らしながら、感染子虫となり犬に寄生するタイミングを見計らっています。
虫卵は、高温の環境では短時間で孵化することも知られています。

鉤虫の感染経路は3つ

鉤虫の感染経路は3つ

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鉤虫の感染経路には、経口感染、経皮感染、犬の母子間での胎盤・経乳感染の3つの経路があります。
このうち、犬と人に共通するのは、土や愛犬の体に付着していた幼虫が口から体に入り込む“経口感染”と、愛犬の糞便や土に潜む感染子虫が皮膚を穿孔して入り込んでくる“経皮感染”です。

人間が鉤虫症になったら

人間が鉤虫症になったら

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人が犬鉤虫に経皮感染をした場合、皮下を幼虫が動き回り、皮膚炎になることがあります。
けれども、人間の体内では幼虫は成虫まで発育することはほとんどありません。
感染子虫に感染しても、しばらくすると犬鉤虫は死滅するので、過度な心配は不要です。

犬鉤虫(鉤虫症)に愛犬が感染したら

犬鉤虫(鉤虫症)に愛犬が感染したら

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犬鉤虫症の別名は、十二指腸虫症。犬鉤虫は犬の小腸に寄生して、吸血をしながら生きています。
犬鉤虫に感染して症状が現れるのは、ほとんどが1歳以下の子犬や若犬です。

母犬から胎盤や母乳を介して感染した場合、生後1週間ほどしてから子犬は下痢をするようになり、急速に衰弱するでしょう。
吸血をする寄生虫なので、貧血によるショック症状で死亡する例も少なくありません。

離乳後の子犬や若犬が感染した場合の主症状は、タール状の下痢。
多くの鉤虫に寄生された場合は貧血を起こし、愛犬の口や目の粘膜が白っぽくなっているのを飼い主さんが確認できるかもしれません。

軽症のケースでは、軽度の下痢が見られたり、毛づやがなかったりといった症状のみ。
血液検査では貧血が見つかることもありますが、ふだんは元気にしているでしょう。

鉤虫の検査と診断方法

鉤虫の検査と診断方法

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犬鉤虫に感染しているかどうかは、糞便を顕微鏡で見ることで検査を行います。
そのため、動物病院を訪れる際は、新しい糞便を持参するようにしましょう。
鉤虫の虫卵が見つかれば、鉤虫症という確定診断が下りますが、ほかの寄生虫との複合感染を起こしている例もあります。
獣医師には、診察時に以下のことを伝えてください。

・下痢が始まった時期
・下痢に血が混じっているか
・下痢の頻度
・お腹を痛そうな様子を愛犬が見せているか
・子犬を迎えた場所とその環境

問診と視診と糞便検査の結果によって、適切な治療法が獣医師から示されることになるでしょう。

鉤虫症の治療法

鉤虫症の治療法

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鉤虫を駆虫できる薬物は複数あります。
フィラリア症の駆虫にも使われるミルベマイシンをはじめ、ピランテルパモ酸塩、フェバンテルなどを投与して、犬の体内から鉤虫を駆除します。
薬物は、錠剤を飲ませたり、皮下注射で投与をします。
寄生虫に栄養を奪われてしまい、栄養状態が不良の場合は栄養補助も行われるでしょう。
腸炎に対する対症療法をすることもあります。
貧血が激しい場合は、輸血などの緊急処置を実施しなければなりません。

鉤虫への対策と予防法は?

鉤虫への対策と予防法は?

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鉤虫は、乾燥と低温に弱いことが知られています。
そのため、住環境の換気を心がけ、ドッグベッドやマットなどは日光消毒をするなどして、ふだんから衛生管理に気遣うようにしたいものです。
熱湯消毒も鉤虫の駆除には有効ですが、食器やおもちゃ以外は熱湯で消毒をするのはむずかしいと言えます。
なにより、鉤虫に屋外で寄生されないように注意しましょう。鉤虫の幼虫は土の中にいるため、ノミやマダニを予防するのと同様、愛犬との散歩中や旅行中は草木の多い公園などは気を付けて。
特に、ほかの犬の便で汚れているところは、極力避けて通ってください。
人への感染を予防するためにも、愛犬の糞便はすぐに片づけることも大切です。

まとめ

まとめ

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小腸に寄生する、犬鉤虫。
鉤虫症は、1歳以下の犬に症状が出るケースがほとんどで、軽症から重症の腸炎、貧血によるショック死や衰弱死まで、その症状は様々。
早期に発見をして、駆虫薬による治療が開始できるように、愛犬に下痢が見られたら早めに動物病院を受診しましょう。

監修者情報

箱崎 加奈子(獣医師)

箱崎 加奈子(獣医師)

・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科

・資格
獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルアロマセラピスト

・職業
獣医師
ペットスペース&アニマルクリニックまりも

・所属団体、学会
一般社団法人女性獣医師ネットワーク(代表理事)

・著書(一部)

[(link) "text": "最新版 愛犬の病気百科","url": "http://www.seibundo-shinkosha.net/products/detail.php?product_id=4092", "target": "_blank"]
著者名: 愛犬の友編集部 編


[(link) "text": "愛犬をケガや病気から守る本","url": "http://www.seibundo-shinkosha.net/products/detail.php?product_id=4439", "target": "_blank"]
著者名: 愛犬の友編集部 編


・職業上でのペットとの関わり
普段犬猫の診察をしています。
飼育放棄や動物愛護センター収容の犬猫の保護譲渡活動をしています。

・飼っている動物
シーズー

・ペット歴
ハムスター、うさぎ、ハリネズミ、犬(シーズー、ヨークシャテリア)

・ペットへの想い
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。

現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。
毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。

プライベートでは一児の母。
愛犬はシーズー。
家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています

・ペットに関するエピソード
シーズー2頭、ヨークシャの全部で3頭の多頭飼いをしていました。
2頭は天寿を全うし、今はシーズーの澪(みお)が1頭です。
動物を飼育する習慣のない家庭に育ちましたので、この仕事に就こうと決めた時に初めて犬を飼いました。
犬初心者からトリマー、トレーナー、獣医と、飼い主目線で自分の愛犬に必要なスキルを身につけました

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ライタープロフィール

臼井 京音 Kyone Usui

臼井 京音 Kyone Usui

旅行誌の編集記者を経て、フリーに。
30代前半でオーストラリアにドッグトレーニング留学をしたのち、現在はドッグジャーナリスト。
2007年から2017年まで東京都中央区で“犬の幼稚園Urban Paws”を経営し園長&家庭犬トレーニングインストラクターとしても活動。
室内外で犬を多頭飼育していた祖父や獣医師の叔父の影響もあり、小学生時代からシマリス、カメ、ミジンコ、カエル、ハムスター、メダカ、最初の愛犬ヨークシャー・テリアを飼いながら、近所の野良猫への餌やりも欠かさない少女時代を過ごす。
現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らしながら、「人と動物のよりよい関係」を願い、小学生時代から愛読していた雑誌『愛犬の友』をはじめ、多数の書籍や媒体で犬をはじめペットに関する執筆活動を行う。
東京都中央区動物との共生推進員。

著書:タイの犬の写真集『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本』
執筆歴:毎日新聞の「臼井京音の幸せ犬ぐらし」連載コラム(09年3月終了)、AllAbout「犬の健康」(09年10月終了)、『AERA(週刊誌)』(朝日新聞出版)、『BUHI(季刊誌)』(オークラ出版)、『フレンチブルドッグ生活の家計簿』※ライティング(オークラ出版)、『きみとさいごまで』※書籍に寄稿(オークラ出版) 、『愛犬をケガや病気から守る本』※編集(誠文堂新光社)、『最新版 愛犬の病気百科』※編集(誠文堂新光社)、ニッポン放送Webサイト「ペットと一緒に by臼井京音」※連載継続中 など

趣味:日本文学を専攻した大学時代から続けている旅行(30代まではバックパッカー旅行も多数)と読書。
20代後半にフリーになってすぐ夜間に2年間写真専門学校に通い始めてからは、世界の人と犬の関わりを撮影すること。
最近は育児に追われてそれらの趣味の時間を持てず、ママさんバレーボールが目下唯一の息抜き。

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