【獣医師監修】犬の寄生虫バベシアに感染したら? 予防法は?

マダニによって媒介される、バベシアという原虫がいます。犬がバベシアに寄生されると、最悪の場合は死亡することもあります。地球温暖化などの影響もあり、マダニによる被害が増えている昨今、バベシア症にも注意が必要です。

【獣医師監修】犬の寄生虫バベシアに感染したら? 予防法は?
出典 : pixta_39227095

バベシアとは

バベシアとは

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バベシアは、細胞1個で成り立っている原虫の一種。
原虫は、細胞分裂によって増殖します。
バベシア類は非常に小さく、肉眼で確認することはできません。

バベシアは原虫の中でも、ピロプラズマ類というグループに属しています。
ピロプラズマ類の中のバベシア類とタイレリア類は、血液に寄生し、それらの原虫が原因で発症する病気はピロプラズマ症と言われます。
とくにバベシア類が原因のものは、バベシア病とも呼ばれます。

世界で多種のピロプラズマ類が確認されていますが、日本には犬に寄生するバベシア・カニスとバベシア・ギブソニの2種類が見られます。
現在のところ、バベシア・カニスは沖縄に分布し、バベシア・ギブソニは近畿地方より西の地域に分布していると言われますが、地球温暖化の影響でほかの昆虫や魚類なども生息域が変化していることから、今後は東海や関東甲信越地方でもバベシア類が認められるようになるかもしれません。

バベシア症になると出る症状は?

バベシア症になると出る症状は?

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マダニの唾液腺に存在しているバベシアは、マダニが犬を吸血する際に犬の体内に入り込みます。
赤血球に寄生してバベシアが増殖する際に、犬の赤血球が破壊されてしまうため、感染された犬には貧血や発熱の症状が現れます。
飼い主さんは、愛犬がバベシア症が原因の赤色の尿をしていることに気づくかもしれません。
貧血が進むと肝機能障害が起こり、感染犬は食欲や元気がなくなり痩せてくるでしょう。
嘔吐や下痢を起こす犬もいます。末期症状は立ち上がれなくなるほど衰弱し、命を落とす危険性が増します。
貧血の進行度によって死亡する確率は左右されますが、10~20%の感染犬が命を失うと考えられています。
80~90%の犬は、バベシア症にかかっても約2ヵ月で快方に向かいます。

人間には、ネズミに寄生するバベシア類が感染したという例がありますが、犬のバベシア症は感染しないと考えられています。

バベシアの検査と診断方法

バベシアの検査と診断方法

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貧血や黄疸といった臨床所見でバベシア症が疑われた場合、血液検査によって確定診断を行います。

犬にバベシア症の症状が見られなくなってからも、原虫は犬の赤血球内に留まっているようです。
そのため、無症状の犬からたまたまバベシアが発見される可能性もあります。

バベシア症の治療法

バベシア症の治療法

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バベシア症の治療には、ジミナゼンやイミドカルブなどの抗原虫薬を使用するのが一般的です。
けれども、これらの薬は副作用が強いので投薬には注意が必要です。
また、完全に駆虫できず、バベシア症を再発するケースも少なくありません。

バベシアの寄生を予防するには?

バベシアの寄生を予防するには?

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バベシアの寄生を予防するワクチンはありません。
ただ、愛犬がマダニに寄生されなければ、バベシア症にかかることはありません。
そのため、最善の予防法は、マダニの寄生を防ぐ対策をしっかりと講じることです。

マダニの吸血活動が活発化する時期は、沖縄では年中、関西以西は春から秋にかけてとなります。
マダニの活動時期は、おいしい味のついたおやつタイプの飲み薬、皮膚に垂らすスポットタイプの駆虫薬などを定期的に愛犬に投与しましょう。
薬によって投与頻度が異なるので、かかりつけ医に相談しながら、飼い主さんのライフスタイルや愛犬にマッチする予防方法を選んでください。
定期的に駆虫薬を投与しておけば、万が一マダニに寄生されても、数時間~数十時間以内に駆除ができるので安心です。

マダニは森林や川や田畑など、自然豊富な場所に潜んでいます。
散歩に出る際は、マダニにも効果がある、犬にも安全な虫除けスプレーを活用するのもおすすめです。
虫除け効果のあるインセクトシールドと呼ばれるウェアを、愛犬に着せて外出するのもよいでしょう。

もしマダニが愛犬にくっついて吸血しているのを見つけても、飼い主さんが引っ張って取り除くのは厳禁。
マダニの口器が、愛犬の体内に残ってしまうからです。
マダニを発見したらなるべく早く動物病院に行き、獣医師による適切な処置を受けてください。
マダニを駆除するのに、動物病院では即効性のあるスプレータイプの駆除薬を使用することが多いでしょう。

まとめ

まとめ

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現在のところ関西以西で発症例が多く見られる、犬のバベシア症。
愛犬が死亡する危険性もある感染症なので、予防が肝心です。
バベシアを媒介するマダニに刺されないように、定期的な駆虫薬の投薬をはじめ、散歩で寄生されないようにするといった対策を徹底しましょう。

監修者情報

箱崎 加奈子(獣医師)

箱崎 加奈子(獣医師)

・学歴、専門分野 麻布大学獣医学部獣医学科 ・資格 獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルアロマセラピスト ・職業 獣医師 ペットスペース&アニマルクリニックまりも ・所属団体、学会 一般社団法人女性獣医師ネットワーク(代表理事) ・著書(一部) 1 最新版 愛犬の病気百科 著者名: 愛犬の友編集部 編 2 愛犬をケガや病気から守る本 著者名: 愛犬の友編集部 編 ・職業上でのペットとの関わり 普段犬猫の診察をしています。 飼育放棄や動物愛護センター収容の犬猫の保護譲渡活動をしています。 ・飼っている動物 シーズー ・ペット歴 ハムスター、うさぎ、ハリネズミ、犬(シーズー、ヨークシャテリア) ・ペットへの想い 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。 現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。 毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。 プライベートでは一児の母。 愛犬はシーズー。 家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています ・ペットに関するエピソード シーズー2頭、ヨークシャの全部で3頭の多頭飼いをしていました。 2頭は天寿を全うし、今はシーズーの澪(みお)が1頭です。 動物を飼育する習慣のない家庭に育ちましたので、この仕事に就こうと決めた時に初めて犬を飼いました。 犬初心者からトリマー、トレーナー、獣医と、飼い主目線で自分の愛犬に必要なスキルを身につけました

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ライタープロフィール

臼井 京音 Kyone Usui

臼井 京音 Kyone Usui

フリーライター、ドッグジャーナリスト 【経歴】 日本文学を専攻しバックパッカーもしていた大学卒業後、旅行ガイドブックの編集プロダクション勤務を経て、フリーライターに。30代前半でオーストラリアにドッグトレーニング留学をしたのち、現在はドッグジャーナリスト。 2007年から2017年まで東京都で“犬の幼稚園Urban Paws”の園長&家庭犬トレーニングインストラクターとしても活動。 東京都中央区 動物との共生推進員。 【執筆歴】 小学生時代から愛読していた雑誌『愛犬の友』をはじめ、多数の書籍や媒体で犬をはじめペットに関する執筆活動を行う。Webサイト「ニッポン放送ニュースオンライン」にて『ペットと一緒にby臼井京音』連載中。 著書:タイの犬の写真集『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本』 これまでの執筆・編集歴は、毎日新聞の「臼井京音の幸せ犬ぐらし」連載コラム、AllAbout「犬の健康」、『週刊AERA』、季刊誌『BUHI』、書籍『フレンチブルドッグ生活の家計簿』、書籍『きみとさいごまで』、書籍編集『愛犬をケガや病気から守る本』、書籍編集『最新版 愛犬の病気百科』など。 【ペット歴】 小学生時代からシマリス、カメ、ミジンコ、カエル、ハムスター、メダカ、最初の愛犬ヨークシャー・テリアなどと生活し、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らしています。 室内外で保護犬やブリーダーから迎えた犬を多頭飼育していた祖父母や、獣医師の叔父、シャム猫を溺愛していた祖母の影響で、生まれた時からずっと動物に囲まれてきました。人と動物のよりよい関係を願い、日々取材と執筆を行っています。

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