【獣医師監修】白色の超大型犬グレート・ピレニーズと幸せな毎日を
かつてアニメの主人公にもなった存在感たっぷりの、グレート・ピレニーズ。大きな体の秘密や、かかりやすい病気、一緒に旅行をする上での秘訣など知識を深めて、グレート・ピレニーズとの日々をもっと豊かに楽しく過ごしましょう。
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目次
グレート・ピレニーズの歴史

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グレート・ピレニーズの原産国はフランス。
犬種名のとおり、ピレネー山脈に古くから暮らし、中世には城館の番犬として活躍していました。
山地で放牧されている家畜の群れを狼などから守るために、大型の護衛犬として改良されました。
もっとも一般的な白っぽい被毛は、羊の群れになじむために必要だったとする説もあります。
ルイ14世やマリー・アントワネットも愛好するなど、次第に山岳地帯を離れて広く普及していたようです。
警衛の仕事を担っていたため、家畜の群れをまとめる牧羊犬ほど活発に走り回らず、外敵の襲撃さえなければゆったりしていて家庭犬向きだった点も、グレート・ピレニーズが人気を獲得した理由でしょう。
グレート・ピレニーズのサイズや被毛など、身体的な特徴

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グレート・ピレニーズの理想体高は、オス70~80cm、メス65~75cm。
体重は40~60kgほどです。
被毛は、寒さと狼などの襲撃から身を守るために密生していて長いのが特徴です。
毛色には、白、頭部や耳にオレンジ色の斑を持つ白、グレー、薄いイエロー、ウルフカラーがあります。
グレート・ピレニーズとの生活のコツ

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グレート・ピレニーズは、群れに対する仲間意識の高い犬種です。
たとえ一軒家であっても、屋外飼育では孤独感によるストレスを抱えてしまいます。
いつも室内で、家族のそばで一緒に過ごさせてあげましょう。
同居する小型犬や猫などがいても、護衛をするような気分で大切にしてくれるに違いありません。
グレート・ピレニーズの高い仲間意識は、多頭飼育にも向いていると言えます。
寒冷な地域が原産の犬種なので、日本のような高温多湿の環境下では熱中症に要注意。
皮膚の蒸れを防いだり体熱を逃しやすくするために、定期的に抜け毛専用ブラシなどを活用して抜け毛をしっかりと取り除きましょう。
必要に応じて、夏期は多少のヘアカットをしても良いでしょう。

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グレート・ピレニーズの平均寿命は?

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日本の家庭犬の平均寿命は約14歳です。
サイズ別では、超大型犬はもっとも短命で、グレート・ピレニーズの平均的な寿命は9~12歳だと考えられています。
グレート・ピレニーズのかかりやすい病気

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グレート・ピレニーズは、以下の病気に比較的かかりやすい傾向があります。
・靱帯損傷、靱帯断裂
大型犬は関節炎になりやすいため、肥満にさせないような食事管理が重要です。
滑らない床で生活をさせるのも重要なポイント。
シニア期になって後肢を地面に着けずに歩いていたら、前十字靱帯断裂の可能性があります。
靱帯断裂を治療せずにいると、半月板損傷や変形性関節症を発症する危険性が高まります。
大型犬では温存療法よりも、外科手術による治療が勧められるでしょう。
最近では、病状の回復具合が良好だと評判が高い、TPLOという術式による手術を行う動物病院も増えています。
・胃捻転
正式な病名は胃拡張胃捻転症候群で、胸の深い大型犬は注意が必要です。
胃が拡張して捻転を起こしてしまうと、吐きそうにしているのに吐けない、不安そうな様子で動き回る、よだれを流すといった症状が現れます。
このような様子が見られたら、胃捻転の可能性があることを電話等で伝え、すぐに動物病院へ。
胃捻転の治療のほとんどは、緊急の外科手術になります。
発症後の処置が遅れると死亡する危険性が高いので、24時間体制で救急対応をしてくれる動物病院をリストアップしておくのをおすすめします。
胃捻転の予防のため、食後や水を多量に飲んでから理想的には2時間、最低でも1時間は、運動をさせないようにしてください。
早食いも発症リスクを高めるので、早食い防止食器なども活用しましょう。
避妊・去勢手術の際などに“胃固定手術”を行うのも、予防法のひとつ。
手術は腹腔鏡手術を選択すれば、侵襲が少なく愛犬への負担も減ります。

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・皮膚疾患
グレート・ピレニーズやサモエドなど、寒冷な地域に古くから生息していた犬種は、高温多湿の日本の気候が原因で皮膚炎を起こすケースがめずらしくありません。
定期的なシャンプーで皮膚を衛生的に保つのが重要です。
また、特に春と秋の換毛期にはブラッシングを毎日行い、皮膚の通気性を損なわないようにも気を配りましょう。
・拡張型心筋症
グレート・ピレニーズやニューファンドランドなどの大型犬に多い、原因不明の心臓病。
初期は症状が出ませんが、重症になると肺水腫による呼吸困難などで命に危険が及びます。
レントゲン検査による発見が主流ですが、動物病院によっては血液を採取して行う心臓バイオマーカーによる早期発見もできるようになりました。
なお、2019年7月にアメリカ食品医薬品局(FDA)が、マメ科の植物の含有量が多いグレインフリーのフードと、拡張型心筋症の発症との関連性を指摘する発表を行いました。
調査は現在も続いているため、明らかな結論は得られていません。
けれども、愛犬の健康を守るために調査や研究の続報を追い続けたいものです。
グレート・ピレニーズとの旅行の秘訣

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グレート・ピレニーズは番犬や護衛犬として活躍した犬種なので、家族以外の人や犬に対して警戒心を見せることがあります。
グレート・ピレニーズに吠えられた人は驚いてしまうと思うので、子犬の頃から、可能な限り多くの人や犬などと適切に触れ合わせて社会化を行っておきましょう。
グレート・ピレニーズは、よだれが垂れやすい犬種でもあります。
旅先ではカフェマットを敷いたり、スタイ(よだれかけ)をしたり、よだれを拭えるタオルなどを多めに持参しておけば、マナー面で安心できるでしょう。
春から秋にかけての旅行では、熱中症対策のグッズも必携です。

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グレート・ピレニーズの価格相場は?

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グレート・ピレニーズの価格相場は、25~65万円ほど。
ドッグショーでのチャンピオンを輩出しているブリーダーの犬舎で生まれた子犬は、価格が高くなる傾向にあります。
まとめ

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子犬の頃は、まるで小熊のようにふわふわでかわいいグレート・ピレニーズ。
成犬になると、頼れるパートナーの趣も十分で、その存在感に癒されるに違いありません。
大きな犬との暮らしや旅行を、健康管理に気遣いながらたっぷり満喫してください。

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監修者情報

箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野 麻布大学獣医学部獣医学科 ・資格 獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルアロマセラピスト ・職業 獣医師 ペットスペース&アニマルクリニックまりも ・所属団体、学会 一般社団法人女性獣医師ネットワーク(代表理事) ・著書(一部) 1 最新版 愛犬の病気百科 著者名: 愛犬の友編集部 編 2 愛犬をケガや病気から守る本 著者名: 愛犬の友編集部 編 ・職業上でのペットとの関わり 普段犬猫の診察をしています。 飼育放棄や動物愛護センター収容の犬猫の保護譲渡活動をしています。 ・飼っている動物 シーズー ・ペット歴 ハムスター、うさぎ、ハリネズミ、犬(シーズー、ヨークシャテリア) ・ペットへの想い 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。 現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。 毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。 プライベートでは一児の母。 愛犬はシーズー。 家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています ・ペットに関するエピソード シーズー2頭、ヨークシャの全部で3頭の多頭飼いをしていました。 2頭は天寿を全うし、今はシーズーの澪(みお)が1頭です。 動物を飼育する習慣のない家庭に育ちましたので、この仕事に就こうと決めた時に初めて犬を飼いました。 犬初心者からトリマー、トレーナー、獣医と、飼い主目線で自分の愛犬に必要なスキルを身につけました
…続きを読むライタープロフィール

臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター、ドッグジャーナリスト 【経歴】 日本文学を専攻しバックパッカーもしていた大学卒業後、旅行ガイドブックの編集プロダクション勤務を経て、フリーライターに。30代前半でオーストラリアにドッグトレーニング留学をしたのち、現在はドッグジャーナリスト。 2007年から2017年まで東京都で“犬の幼稚園Urban Paws”の園長&家庭犬トレーニングインストラクターとしても活動。 東京都中央区 動物との共生推進員。 【執筆歴】 小学生時代から愛読していた雑誌『愛犬の友』をはじめ、多数の書籍や媒体で犬をはじめペットに関する執筆活動を行う。Webサイト「ニッポン放送ニュースオンライン」にて『ペットと一緒にby臼井京音』連載中。 著書:タイの犬の写真集『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本』 これまでの執筆・編集歴は、毎日新聞の「臼井京音の幸せ犬ぐらし」連載コラム、AllAbout「犬の健康」、『週刊AERA』、季刊誌『BUHI』、書籍『フレンチブルドッグ生活の家計簿』、書籍『きみとさいごまで』、書籍編集『愛犬をケガや病気から守る本』、書籍編集『最新版 愛犬の病気百科』など。 【ペット歴】 小学生時代からシマリス、カメ、ミジンコ、カエル、ハムスター、メダカ、最初の愛犬ヨークシャー・テリアなどと生活し、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らしています。 室内外で保護犬やブリーダーから迎えた犬を多頭飼育していた祖父母や、獣医師の叔父、シャム猫を溺愛していた祖母の影響で、生まれた時からずっと動物に囲まれてきました。人と動物のよりよい関係を願い、日々取材と執筆を行っています。
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