【ドッグトレーナー監修】犬の食糞やいたずら防止にスプレーを使用しても大丈夫? 効果は? 害はある?

犬の食糞やいたずら防止、無駄吠えの改善などを目的としたしつけ用のスプレーには、「噴射の音で驚かせる」「嫌なニオイや味を感じさせる」など様々な種類のものが市販されていますが、犬に危険はないのでしょうか。ここでは、スプレーを使用したしつけの効果や犬への影響についてお話します。

【ドッグトレーナー監修】犬の食糞やいたずら防止にスプレーを使用しても大丈夫? 効果は? 害はある?
出典 : pixta_64633173

犬の「しつけ用スプレー」どんな影響があるの?

犬の「しつけ用スプレー」どんな影響があるの?

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●嫌な経験を通して学習する
人をはじめ、動物は何かの行動をした後に「痛み」や「恐怖」「不安」といった嫌なことを経験すると、その時とった行動をしなくなる傾向があります。
「噴射の音で驚かせる」「嫌なニオイや味を感じさせる」などといったしつけ用のスプレーは、飼い主さんにとって望ましくない行動(問題行動)を犬がした際に、嫌いな音や匂い、味などを与えて問題行動を防ぐために使用します。
そのため、しつけ用スプレーの効果が期待できるということは、同時に犬が痛みや恐怖、嫌な思いを経験していることになります。

●痛みを伴う刺激は体罰に
以前はお酢を水で薄めて霧吹きに入れ、犬に吹きかけるという方法も聞かれましたが、お酢のような刺激の強いものは、匂いだけでなく目や鼻などの粘膜を刺激して痛みも伴います。
このような痛みを伴うしつけは体罰の一つであり、犬に過剰な痛みや恐怖を与えてしまうため基本的におすすめできません。

犬の「しつけ用スプレー」使い方が難しい

犬の「しつけ用スプレー」使い方が難しい

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●効果が薄れてきてしまう
しつけ用スプレーとして代表的なものの一つに、家具などの噛んでほしくない場所に直接スプレーし、噛み癖を予防するものがあります。
しかし「最初のうちは効いていたが、次第に慣れてきて効かなくなってきた・・・」といった経験をした方も多いと思います。
犬が慣れないような強い刺激の成分では、犬の体にも何かしらの悪影響を与えてしまうため、これらの商品は犬の体に影響のない弱い刺激の成分を使用しています。
そのため、犬は徐々に刺激に慣れてきて必然的に効果は薄れていきます。
また、犬は塗っているときと塗っていないときを見分けるため、これらのしつけのスプレーを使用して問題行動を防ぐためには、スプレーを使用し続けないと効果が期待できなくなることもあります。

●使用する飼い主に恐怖心を持ってしまう
「お酢を吹きかける」「噴射の音で驚かせる」ようなしつけ用スプレーは、飼い主さんが犬に対して直接使用するため、使用する飼い主さんを怖がるようになることがあります。
そしてその恐怖心がさらに強くなると、使用した際に身を守ろうとして飼い主さんに攻撃を仕掛けるようになってしまうこともあります。

また、しつけ用スプレーを使った罰が犬にとって強すぎた場合や飼い主さんが不必要に乱用した場合、最悪のケースのひとつに、学習性無力症を引き起こしてしまうこともあります。

これは、虐待を受けた人が「自分の力では何をしても結果は変わらない」と、自ら逃げようとする気力を失ってしまう症状をいいます。
長期間に渡って恐怖や不安な気持ちを与えられると「何をしても無駄」とあきらめ、その場や状況から逃げる努力を放棄してしまうのです。

こうした症状は犬にも当てはまります。
昔は、罰を利用して行うトレーニングが多くありました。
実際に、そのような治療やトレーニングを終えた犬は大人しくなり、一見すると従順な性格へと矯正されたかのように感じられたことでしょう。

しかし、その実態は、恐怖が強すぎるために無気力になっているだけ、というのがほとんどだったと考えられます。

罰を使った方法は、即効性があるため、ついついしてしまいがちになってしまいますが、そうすると犬は逃げ場を失って無気力になってしまい、飼い主さんとの信頼関係も大きく崩れてしまいます。

犬の「しつけ用スプレー」市販のスプレーを使用してもいい?

犬の「しつけ用スプレー」市販のスプレーを使用してもいい?

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使用を考える前に

犬が嫌がる「刺激スプレー」の使用は、緊急性がある場合にのみと限定して考えたほうが良いでしょう。
例えば集合住宅などでは、犬の吠え声が原因で他の住民とトラブルになってしまい、すぐに対処しないと退居させられてしまうなど、愛犬をめぐる近隣トラブルが発生し、裁判にまで発展してしまったなどもあります。
どうしてもやむを得ない事情がある場合に緊急手段のひとつに加えてみましょう。

罰を与えるしつけは強弱のコントロールが難しく、使いこなすにはプロと同じ熟練のテクニックが必要です。
罰が弱すぎれば効果はありませんし、強すぎれば大きな恐怖と苦痛を与えることになります。

罰を与えるタイミングも重要です。
的確な強さで的確なタイミングの罰を一定期間与え続けることができなければ効果は期待できません。
しつけに効果的な罰を与えるのは至難の業といっていいでしょう。

不要な恐怖や痛みを与えるしつけは体罰となり、飼い主さんへの恐怖心から犬との信頼関係が損なわれてしまいます。
一度失われた信頼関係を再び築くのは簡単なことではありません。

犬によっては、自分の身を守るために飼い主さんに攻撃することもあるでしょう。
しつけのために使ったスプレーから「噛み付き」「吠え」などの新たな問題が発生しては意味がありませんよね。

●自己判断はしないこと
刺激を与える際の適切な強さの基準や判断は難しいものです。
仕方がなくてどうしても、という場合にも、高いリスクを考え、プロのトレーナーや獣医師に一度相談することをおすすめします。
決して自己判断では行わないようにしましょう。

犬の「しつけ用スプレー」まとめ

犬の「しつけ用スプレー」まとめ

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トイレトレーニング、無駄吠え、噛み癖、マーキングなど、犬のしつけのために罰を与える目的で「しつけ用スプレー」を使うことは緊急事態でない限りはやめましょう。

痛みや苦痛、恐怖を与えて罰を利用するトレーニングは扱いが難しく、一般の家庭で安易に使用するのは危険です。
簡単そうだからと気軽な気持ちで使用した結果、犬に大きな恐怖心を抱かせることになりかねません。
信頼関係が崩れてしまったら、もう一度関係を構築するのは困難でしょう。

問題行動に直面した際には、罰を与えることでその行動をやめさせるようと考えるのではなく、何をすれば犬が問題を起こさないのかを考えると同時に、飼い主さんにとって望ましい行動を褒めてあげましょう。
犬には善悪の判断がつかないため、叱られたり罰を与えられてもその意味を理解することは出来ません。
まずは、飼い主さんが「してほしいこと」を思い切り褒めてあげることが、問題行動の改善には不可欠です。

リスクが高いしつけはせず、大らかな気持ちで時間をかけてトレーニングするのが近道です。
愛犬の様子をよく観察し、性格を理解しながら進めていってくださいね。

監修者情報

鹿野 正顕(学術博士)

鹿野 正顕(学術博士)

・学歴(大学・院、学部、専門分野) 麻布大学大学院 獣医学研究科 博士後期課程修了  専攻:人と動物の関係学、犬の行動学 麻布大学介在動物学研究室(旧 動物人間関係学研究室)にて、人と犬の関係、特に犬の問題行動やトレーニングの研究を行い、人と犬の関係学の分野で日本初の博士号を取得。 ・資格 CPDT-KA(Certified Professional Dog Trainer - Knowledge Assessed) (世界最大家庭犬トレーナー資格) ・職業 スタディ・ドッグ・スクール® 代表 株式会社 Animal Life Solutions(ALS) 代表取締役社長 ・所属団体、学会 日本ペットドッグトレーナーズ協会(JAPDT) 理事長 動物介在教育療法学会(ASAET) 理事 ・受賞歴 平成16年度さがみはら青年アントレプレナービジネスコンテスト 優秀賞 ・著書 ◆ 「犬の行動学入門」 監修:森 裕司 著:鹿野 正顕/中村 広基    ◆ 「アニマルセラピー入門」   編集:NPO法人 ひとと動物のかかわり研究会 監修:太田 光明 ◆ DVD「子犬と暮らす前に 準備と選び方」   ◆ DVD「子犬を家に迎えたら 飼い方・しつけ方」 販売元:アイディーマグネテック株式会社 監修:鹿野 正顕 ◆ 建築知識 創刊60周年記念出版「犬のための家づくり」 発行:エクスナレッジ ◆Oral tyrosine changed the responses to commands in German shepherds and Labrador retrievers but not in toy poodles   Masaaki Kano,Hidehiko Uchiyama,Mitsuaki Ohta,Nobuyo Ohtani (2015) ◆ 応急仮設住宅における人とペットが共棲する住環境に関する音響特性評価 浅見 樹里, 田村 雅紀, 金巻 とも子, 鹿野 正顕, 長谷川 成志 ジャーナル:工学院大学総合研究所・都市減災研究センター (Research Center for Urban Disaster Mitigation: UDM) 研究報告書 (平成25年度) ・職業上でのペットとの関わり ドッグトレーナーとして飼い主指導 獣医師、ドッグトレーナーなどの専門家に対する犬の行動・しつけ・トレーニング等の教育 学校機関での専門家の育成 メディアを通した情報発信 企業に対するペット関連コンサルタント ・飼っている動物 スタンダード・プードル(♀:柔、11歳) ・ペット歴 犬:Mix(4匹)、ミニチュアシュナウザー(1匹)、ジャーマンシェパード(1匹) スタンダード・プードル(1匹) ネコ:2匹 シマリス:2匹 ウサギ:1羽 セキセイインコ:5羽 ・ポリシー(ペットに関する) 動物の習性を客観的に理解し、人と動物互いのバランスを保った共生を追求する ・エピソード(ペットに関する) 畜産を兼業していた農家出身の両親は、ともに動物が好きだったことから、よく捨てられた犬を拾ってきて家で飼っていました。そのため、私は幼少のころから常に犬と一緒の生活を送り、鍵っ子だった私の寂しい気持ちを犬はいつも癒してくれ支えとなってくれました。  当時の犬の飼い方は今とは全く異なり、犬は外で飼うのは当たり前で予防接種をしたり動物病院に連れていくこともあまり一般的ではありませんでした。特に私の父親は、戦後間もない、物のない時代で生まれ育ったため、動物にお金をかける意識が低く、予防接種や病気の治療なども満足には行わなかったため、我が家の犬たちも非常に短命で、大学に進学するまでの12年間で4頭もの犬を飼育してきました。  そんな犬の飼い方に、幼いころから何となく疑問を感じていた私にとって、小学生の頃、今の仕事を志すようになった衝撃的な事件が起きました。避妊もしていなかった我が家の犬は、ある日、家に迷い込んできた野犬と交配してしまい、自宅で1匹の子犬を産みました。私は父に、産まれた子犬を飼うことをお願いしましたが、2頭も同時に飼うことができないという理由で拒まれてしまいました。そこで、子犬の里親を見つけることを懇願すると、父は承諾をしてくれたと思ったのですが、次の日の朝、子犬はいませんでした。  気が動転した私は、すぐに父のもとへ行き子犬の行方を尋ねると、父は夜中に山に捨ててきたと答えました。ショックでした。言葉が出ないくらい、頭の中が真っ白になるぐらいショックでした。私は、泣きじゃくりながら父親に怒りをぶつけましたが、もうその子犬が家に帰ってくることはありませんでした。  このことがきっかけで、私は、「犬をもっともっと大切にする社会に変えたい」、「家族の一員としてもっともっと犬との絆を深められる社会にしたい」、そう決意し犬の専門家になることを強く志し、「犬とのより良い共生社会の確立」という夢をかなえるべく、麻布獣医大学の獣医学部動物応用科学科に進学をしました。  大学院の博士課程が修了後、同じ志をもち、共に学生時代に犬の研究チームをまとめ、同期共に、さらなる夢をかなえるべく、大学のベンチャー企業として株式会社アニマルライフ・ソリューションズを立ち上げ、現在でも「犬とのより良い共生社会の確立」を目指した事業活動を行っています。

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ライタープロフィール

石川 明加 Haruka Ishikawa

石川 明加 Haruka Ishikawa

フリーライター 【経歴】 1977年生まれ神奈川県出身。目白学園女子短期大学国語国文科卒。編プロ勤務を経て2005年より独立。以来、雑誌や広告、webメディアなどで取材執筆。美容と健康、ウエディングからペットとの暮らしまで、より豊かな毎日を過ごすための女性のライフスタイル提案などを多く取材。おもにウェディング系、ペット関連の分野にて長く取材を続けており、ペット記事の執筆歴は10年以上。 【執筆歴】 ペット系フリーマガジン『ONE BRAND』、ウェディング情報誌『Wedding collection』、雑誌『ESSE』、webメディア『ourage』ほか 【ペット歴】 犬、猫、ハムスターなど。現在は、元保護犬のはな(メス、シニアの洋犬ミックス)と暮らす。 【ペットへの想い】 その短い命で、私たちの人生をどれほど豊かにしてくれるのでしょう。いつでも愛してくれて、希望をくれて、最高に笑わせてくれます。仲良くしてくれてありがとう。 【愛犬とのエピソード】 リビングのソファで「はな」と一緒に寝ているとき、だいたいは私の頭と反対側に「はな」が寝ています。たまに、太ももやお腹の上に乗っかっていて、私が体の向きを変えた拍子に仰向けにひっくり返ります。起き上がると「またやったの?」というような顔をして(もしくは何もなかったように)耳を片方ひっくり返したまま私を見ます。「はな」には悪いですが、その様子が面白く「ごめん、ごめん」と言いながら笑ってしまいます。それから、はなが水を飲むとき、水入れの周りがいつも水びたしになります。その水びたしの光景が「はなが水を飲んだのね」と安心できて好きです。

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