【鹿野先生のおでかけレッスン ワン・2・3!】Vol.1 クレートトレーニング

周囲に迷惑をかけてしまわないか心配で、愛犬とのおでかけを躊躇したことはありませんか?愛犬とのおでかけを安心して楽しむためには、日頃のトレーニングが欠かせません。今回はドッグトレーナーで学術博士でもある鹿野正顕先生に、お出かけの際にとても便利な「クレートトレーニング」の方法とその意義について教えていただきます。

【鹿野先生のおでかけレッスン ワン・2・3!】Vol.1 クレートトレーニング

クレートに入る習慣ができれば、移動中や旅先でも安心

クレートに入る習慣ができれば、移動中や旅先でも安心

そもそも、なぜ愛犬にクレートトレーニングが必要なのでしょうか?「クレートに愛犬を入れる=閉じ込める」という印象があって、抵抗を覚える飼い主さんもいるようです。

鹿野正顕(かのまさあき)先生(以下、鹿野):まず、理解しておきたいのは、クレートの中で過ごすことは、本来、愛犬にとって苦痛ではないということです。
というのも、愛犬には次のような特性があり、サイズや置き場所などが適切であれば、クレートは愛犬の休息に最適な場所と言えるからです。

<愛犬の特性>
・静かで薄暗く、囲われたような場所を寝床として好む
・柔らかい場所で寝ることを好む
・犬種や個体によっては、寝床に対する縄張り意識が高く、休んでいるときに人や他の犬に干渉されることを嫌がる

また、クレートには愛犬にとっても飼い主さんにとっても、利点がたくさんあります。
愛犬には安心して休息できる場所になりますし、愛犬がクレートで安心して過ごせるようになると、飼い主さんは来客の応対や家事がしやすくなります。

車中でクレートを使う際はシートベルト等でしっかり固定しましょう

車中でクレートを使う際はシートベルト等でしっかり固定する

―クレートトレーニングは、おでかけにも役立つのですか?

鹿野:もちろんです。いつも使っているクレートを持っていけば、旅先のホテルなど、初めて行った場所でも安心して過ごせる「自分の場所」を確保してあげることができますし、車での移動中も安全に過ごすことができますよね。

また、災害時の避難や避難先での生活にも役立ちます。おでかけ先では、何が起こるか予測できません。
どんな状況でも愛犬の身を守り、安心して過ごさせてあげるために、クレートは最適な道具なのです。

クレートトレーニングは、正しいクレート選びから

愛犬が無理なく立ち上がれる高さのものを選ぶこと

愛犬が無理なく立ち上がれる高さのものを選ぶこと

―クレートトレーニングはどのようにして始めればよいのでしょうか?

鹿野:クレートトレーニングの第1歩は、愛犬に適したサイズのクレートを用意することです。
以下を参考に、ゆとりのあるサイズのクレートを選んであげましょう。

<クレート選びの目安>
・高さ:クレートの中で愛犬が立ち上がっても頭があたらないくらいの高さ(余裕を持つなら+5cmくらい)
・奥行き:鼻先からお尻くらいまでの長さ(余裕を持つなら+5cmくらい)
・横幅:愛犬がクレートの中で無理なく回転できたり、横になって寝ることができる大きさ
 ※子犬の場合は、成犬になったときの大きさを想定して選びましょう。

窓際はNG!クレートの置き場所も要注意

外が見えない場所が落ち着く

外が見えない場所が落ち着く

―クレートは部屋の中のどこに置くのが良いでしょうか?

鹿野:まず、愛犬の安全確保のために、倒れやすい家具やガラス窓・扉の側は避けることが大前提です。
その上で、飼い主さんの姿が確認しやすく、かつ玄関や窓から離れたなるべく家の中心に設置します。

外の様子が気になって落ち着かないため、窓際はNG

外の様子が気になって落ち着かないため、窓際はNG

窓や玄関の近くは外からの音が入りやすいため、犬が落ち着いて過ごすことが出来せん。
そのため、知らない人や他の犬や猫などの動きや、配達のバイクや車のエンジン音に警戒して吠えてしまい、ご近所トラブルに発展してしまうおそれもあります。
なるべく外が見えにくい部屋の隅に設置するようにしてください。

なお、多頭飼いをしている場合は、それぞれ専用のクレート(休息場所)を用意し、少し距離をおいて設置してあげるようにします。

「仲が良いから大丈夫」と言って2頭以上の愛犬にクレート(休息場所)を共有させるのは、原則としてNGです。
愛犬にとってクレート(休息場所)はごくプライベートな空間なので、他の犬と一緒に過ごしたり干渉されたりすることは大きなストレスになります。
必ず別々の休息場所を設けてあげましょう。

クレートに入りたがらない場合のトレーニング法は?

愛犬がクレートに入ってくれません。クレートトレーニングは、どのように進めればいいでしょうか?

鹿野:クレートトレーニングは、大きく分けて次の3つのステップで進めます。

【STEP1】クレートに入ることを習慣化し、安心できる休息場所として認識させる

サークルの中にクレートとトイレを入れ「休息場所」をつくる

サークルの中にクレートとトイレを入れ「休息場所」をつくる

クレートの中で過ごすことを子犬のころから習慣づけるようにトレーニングしましょう。
子犬の間は、トイレのしつけ/イタズラ(家具を噛むなど)をしないしつけができるまでは、サークルの中に入れる時間と出す時間を決めておくと良いでしょう。

コングを使って、クレートと嬉しいことを結びつけて記憶させる

コングを使って、クレートと嬉しいことを結びつけて記憶させる

クレートに入りたがらない場合は、「クレートに入ること」と「犬にとって嬉しいこと」を結びつけて、愛犬をクレートに誘導するのがポイント。
子犬なら、フードやおやつを「コング(※)」に詰めてクレートの中で与える方法が有効です。
(※中にフードやおやつを入れて遊べる愛犬用の知育玩具)

また、冬は毛布などを入れてクレートの中を暖かくしておく、春~夏など気温の高い時期は風通しが良くて涼しい場所にクレートを設置するなど、状況に応じて居心地が良い環境を整えてあげるのも大切です。

寝室でも飼い主さんの姿が確認できると安心

寝室でも飼い主さんの姿が確認できると安心

また、愛犬が夜鳴きをしてしまう場合は、以下の方法を試してみてください。

・飼い主さんの寝室内にサークルを設置し、クレートとトイレを入れて昼間と同じ環境を作る
・小さな明かりを点けておき、真っ暗にしない
・テレビや音楽などを小さな音で流し、無音にしない
・お気に入りのタオルやぬいぐるみ、人肌に温めたお湯を入れたペットボトルなどをクレートに入れる

【STEP2】扉を閉めてクレートの中で過ごす練習をする

扉を閉めても落ち着いて過ごせるようになるのが目標

扉を閉めても落ち着いて過ごせるようになるのが目標

クレートの中で自発的に寝起きできるようになったら、クレートの扉を閉めても落ち着いて中で過ごせるように練習をします。
扉を閉めるのを嫌がったり不安がったりする場合は、以下の方法を試してみてください。

・散歩や運動などで欲求を満たし、ほどよく体が疲れたタイミングで練習を行う
・コングに食べ物やおやつを詰めたものをクレートに入れ、食べている間に扉を閉める。特に運動等で疲れた後に時間をかけて食べさせると、運動欲求と食欲が満たされるため、クレートの中で休息しやすくなる
・最初は、扉を閉める時間を短めにし、少しずつ長くしていく

【STEP3】いろいろな場面でクレートに入っていられるように練習する

いろいろな場面でクレートに入っていられるように練習する

STEP2までできるようになったら、下記のような状況でも愛犬が落ち着いてクレートに入っていられるように練習しましょう。

・飼い主さんにかまってもらえないとき
→飼い主さんが食事中や掃除中、休んでいるときに大人しくクレートに入っていられるようにします。
・車での移動中
→車での移動が多い場合は、車専用のクレートを常設しておくと便利です。
・夜間
→災害時に備え、たまにクレートで寝る練習をしておきましょう。

これらの状況でもクレートの中で過ごせるようになれば、日々の暮らしはもちろん、愛犬とのおでかけも安心して楽しめるようになるでしょう。

できない場合は、焦らずにSTEP2もしくは1まで戻って、「クレートの中にいる=良いことがある」ということ、を繰り返し教えること。
できなくても、決して大声で叱ったり無理にクレートに押し込めたりしてはいけません。
愛犬がますますクレートを嫌いになってしまいます。

どうしてもできない場合は、クレートそのものではなく、住環境や飼い主さんとの関係に何か問題があるのかもしれません。
ぜひ、ドッグトレーナーに相談してみてください。

次回は、効果的なトイレトレーニングの方法をご紹介します。

監修者情報

鹿野 正顕(学術博士)

鹿野 正顕(学術博士)

・学歴(大学・院、学部、専門分野) 麻布大学大学院 獣医学研究科 博士後期課程修了  専攻:人と動物の関係学、犬の行動学 麻布大学介在動物学研究室(旧 動物人間関係学研究室)にて、人と犬の関係、特に犬の問題行動やトレーニングの研究を行い、人と犬の関係学の分野で日本初の博士号を取得。 ・資格 CPDT-KA(Certified Professional Dog Trainer - Knowledge Assessed) (世界最大家庭犬トレーナー資格) ・職業 スタディ・ドッグ・スクール® 代表 株式会社 Animal Life Solutions(ALS) 代表取締役社長 ・所属団体、学会 日本ペットドッグトレーナーズ協会(JAPDT) 理事長 動物介在教育療法学会(ASAET) 理事 ・受賞歴 平成16年度さがみはら青年アントレプレナービジネスコンテスト 優秀賞 ・著書 ◆ 「犬の行動学入門」 監修:森 裕司 著:鹿野 正顕/中村 広基    ◆ 「アニマルセラピー入門」   編集:NPO法人 ひとと動物のかかわり研究会 監修:太田 光明 ◆ DVD「子犬と暮らす前に 準備と選び方」   ◆ DVD「子犬を家に迎えたら 飼い方・しつけ方」 販売元:アイディーマグネテック株式会社 監修:鹿野 正顕 ◆ 建築知識 創刊60周年記念出版「犬のための家づくり」 発行:エクスナレッジ ◆Oral tyrosine changed the responses to commands in German shepherds and Labrador retrievers but not in toy poodles   Masaaki Kano,Hidehiko Uchiyama,Mitsuaki Ohta,Nobuyo Ohtani (2015) ◆ 応急仮設住宅における人とペットが共棲する住環境に関する音響特性評価 浅見 樹里, 田村 雅紀, 金巻 とも子, 鹿野 正顕, 長谷川 成志 ジャーナル:工学院大学総合研究所・都市減災研究センター (Research Center for Urban Disaster Mitigation: UDM) 研究報告書 (平成25年度) ・職業上でのペットとの関わり ドッグトレーナーとして飼い主指導 獣医師、ドッグトレーナーなどの専門家に対する犬の行動・しつけ・トレーニング等の教育 学校機関での専門家の育成 メディアを通した情報発信 企業に対するペット関連コンサルタント ・飼っている動物 スタンダード・プードル(♀:柔、11歳) ・ペット歴 犬:Mix(4匹)、ミニチュアシュナウザー(1匹)、ジャーマンシェパード(1匹) スタンダード・プードル(1匹) ネコ:2匹 シマリス:2匹 ウサギ:1羽 セキセイインコ:5羽 ・ポリシー(ペットに関する) 動物の習性を客観的に理解し、人と動物互いのバランスを保った共生を追求する ・エピソード(ペットに関する) 畜産を兼業していた農家出身の両親は、ともに動物が好きだったことから、よく捨てられた犬を拾ってきて家で飼っていました。そのため、私は幼少のころから常に犬と一緒の生活を送り、鍵っ子だった私の寂しい気持ちを犬はいつも癒してくれ支えとなってくれました。  当時の犬の飼い方は今とは全く異なり、犬は外で飼うのは当たり前で予防接種をしたり動物病院に連れていくこともあまり一般的ではありませんでした。特に私の父親は、戦後間もない、物のない時代で生まれ育ったため、動物にお金をかける意識が低く、予防接種や病気の治療なども満足には行わなかったため、我が家の犬たちも非常に短命で、大学に進学するまでの12年間で4頭もの犬を飼育してきました。  そんな犬の飼い方に、幼いころから何となく疑問を感じていた私にとって、小学生の頃、今の仕事を志すようになった衝撃的な事件が起きました。避妊もしていなかった我が家の犬は、ある日、家に迷い込んできた野犬と交配してしまい、自宅で1匹の子犬を産みました。私は父に、産まれた子犬を飼うことをお願いしましたが、2頭も同時に飼うことができないという理由で拒まれてしまいました。そこで、子犬の里親を見つけることを懇願すると、父は承諾をしてくれたと思ったのですが、次の日の朝、子犬はいませんでした。  気が動転した私は、すぐに父のもとへ行き子犬の行方を尋ねると、父は夜中に山に捨ててきたと答えました。ショックでした。言葉が出ないくらい、頭の中が真っ白になるぐらいショックでした。私は、泣きじゃくりながら父親に怒りをぶつけましたが、もうその子犬が家に帰ってくることはありませんでした。  このことがきっかけで、私は、「犬をもっともっと大切にする社会に変えたい」、「家族の一員としてもっともっと犬との絆を深められる社会にしたい」、そう決意し犬の専門家になることを強く志し、「犬とのより良い共生社会の確立」という夢をかなえるべく、麻布獣医大学の獣医学部動物応用科学科に進学をしました。  大学院の博士課程が修了後、同じ志をもち、共に学生時代に犬の研究チームをまとめ、同期共に、さらなる夢をかなえるべく、大学のベンチャー企業として株式会社アニマルライフ・ソリューションズを立ち上げ、現在でも「犬とのより良い共生社会の確立」を目指した事業活動を行っています。

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ライタープロフィール

相山 華子 Hanako Aiyama

相山 華子 Hanako Aiyama

【経歴】 1997 年慶應義塾大学卒業。同年、株式会社山口放送(日本テレビ系列)に入社、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修、翻訳(英語→日本語)も手掛ける。 【受賞歴】 サントリー「横浜開港150周年記念エッセイコンテスト」最優秀賞受賞、 JR東日本「列車の旅エッセイコンテスト」最優秀賞受賞 など 【資格】 英検1級、ファイナンシャル・プランナー(AFP) 【暮らし】 仕事でもプライベートでも「いろんなところに行って、いろんな人に会う」のが信条。好きな旅のスタイルは鉄道旅。最近は家族で秘境駅巡りを楽しんでいる。大型犬好きで、これまでに飼った犬種はドーベルマンとラブラドール・レトリバー。

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