【鹿野先生のおでかけレッスン ワン・2・3!】Vol.2 トイレトレーニング
愛犬とのおでかけを安心して楽しむためのトレーニングを学ぶシリーズ2回目は、「トイレトレーニング」です。おでかけ先で周囲の人に迷惑をかけてしまうことのないよう、飼い主さんの指示どおりに排泄ができるようにするトレーニング法を、ドッグトレーナーの鹿野正顕先生に教えていただきます。
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目次

【鹿野先生のおでかけレッスン ワン・2・3!】Vol.1 クレートトレーニング
トイレの失敗=愛犬の排泄行動についての理解不足が原因

―子犬のころはともかく、成犬になっても何故トイレに失敗してしまう愛犬がいるのでしょうか?
鹿野正顕(かのまさあき)先生(以下、鹿野):愛犬のトイレの失敗は、愛犬の排泄行動に関する飼い主さんの理解不足によるものが大部分です。
愛犬の排泄に適した環境を整え、飼い主さんがしっかりリードしてあげれば、トイレの失敗はほぼなくなります。
まずは、以下に挙げた愛犬の排泄行動の特性を理解した上で、トイレトレーニングに臨みましょう。
排泄行動の特性①「排泄する場所についての特性」
・寝床から離れた場所で排泄をする
→クレートと離れた場所にトイレを設置
・柔らかいところで排泄をする
→座布団やクッションはなるべく置かないようにする
・匂いの残った場所で排泄を繰り返す
→粗相をしてしまった場所の掃除・消臭の徹底を
・犬によっては排尿で濡れている場所には排泄をしたがらない
→トイレシーツは1回毎に取替が必要
・犬によっては排尿と排便の場所を分けて行う
→トイレが2か所必要
排泄行動の特性②「排泄するタイミングについての特性」
・子犬の時期に排泄を我慢できる時間は「月齢+1時間」程度
→排泄を促すタイミングの目安に
・子犬の時期の排泄のタイミングには傾向がある
→排泄の傾向がわかれば失敗対策ができる
・精神的不安(緊張、分離不安など)によって排泄が不規則になる場合がある
→おでかけ先などでは「いつもと違う時間」に排泄をすることも
排泄行動の特性③「その他」
・他の犬の排泄物の匂いに自分の排泄物の匂いを上書きしようとする(縄張り)
→他の犬がいる場所ではおむつの着用などが効果的
・排泄とマーキングでは目的や尿の成分が異なる
→マーキングを減らすには他の犬の匂いを嗅がせすぎないことが大切
・飼い主への嫌がらせ目的で排泄をすることはない
→勝手に理由を決めつけず、本当の原因を探すこと
トレーニングの目的は「飼い主の指示のもとで排泄できるようになること」

―トイレトレーニングの目標は、どこに設定すればよいでしょうか?トイレシートの上で排泄できるようになれば、合格でしょうか?
鹿野:いいえ、単にトイレシーツの上で排泄できるようになることが、トイレトレーニングのゴールではありません。
自宅ではともかく、おでかけ先でも快適に安心して過ごすためには、「飼い主の指示に従って排泄できるようになること」です。
そうすれば、排泄ができる場所やタイミングを飼い主が見計らった上で愛犬に排泄を指示できるので、他の人に迷惑をかけることがなくなります。
屋外でもトイレシーツの上で排泄できるようになれば、理想的です。
「排泄ぐらい自由にさせてあげたい」という飼い主さんもいるかもしれませんが、社会の一員として愛犬が快く受け入れられるためには、周囲に迷惑をかけないことが大前提です。
トレーニングは結果として、愛犬の幸せにつながるという信念をもって取り組んでください。
家庭内では「トイレ2ヵ所設置」を基本に

子犬のころはサークル内にトイレとクレートをセットで設置
―まずは、家庭内でのトレーニングを始めるにあたって何を準備すればよいのかを教えてください。
鹿野:まずは環境を整えましょう。子犬のころは、自分の「休息場所」(→Vol.1参照)を覚えさせるために、サークルの中にクレートとトイレをセットで設置します。

【鹿野先生のおでかけレッスン ワン・2・3!】Vol.1 クレートトレーニング

サークルの中のトイレで排泄ができるようになっても、サークルの外にいるときにトイレに戻って排泄ができるようになるのはとてもむずかしいため、サークルの外にいる時間にも排泄ができるように外にもトイレを設置します。
また、前述のとおり排尿と排便を分けたがる場合も、トイレは2ヵ所設置するようにしてください。
―サークル外にトイレを設置するときは、どんな点に注意すればいいでしょうか?
鹿野:掃除のしやすさと、愛犬が失敗しづらい環境づくりを両立させるために、以下の点に注意してください。
・撥水性のある素材の床の場所に設置する(洗浄しやすいクッションフロアなど)
・愛犬はやわらかい場所で排泄をしたがる傾向があるので、クッションや座布団を床に置かない
・飼い主の目が届かなくなるため、行動範囲を広げすぎない
・排泄前に体を回転させる愛犬が多いので、回転できる大きさのトイレトレイやシーツを準備する
愛犬が排泄しやすいタイミングと排泄のサインを知ろう

―サークルから出すと失敗してしまいそうで不安な場合は、どうすればいいですか?
鹿野:失敗を予防するためにも、愛犬をサークルの中に入れる時間とサークルの外で過ごす時間を決め、サークルの外にいるときは、愛犬から目を離さないようにしてください。
どうしても目を離さなければならないとき(就寝中や留守番中)などは、必ずサークルに入れる習慣をつけます。
子犬のうちは、サークル内のトイレで排泄を済ませてから、サークルの外に出すようにすると、失敗を予防できます。
また、愛犬の様子をよく観察していると、一定のタイミングで排泄をする傾向にあることや、排泄前特有の動き(=サイン)を見せることもわかってきます。
愛犬のタイミングやサインを見逃さずにトイレにつれていくようにすると、失敗が少なくなる上に、愛犬に「このシートの上が、排泄の場所である」ことを、学習させることができます。

飼い主さん次第で「失敗」は予防できる可能性大!
※排泄しやすいタイミングの例
・寝起き
・水を飲んだあと
・遊んだあと
・食事のあと
・一定の時間
※排泄のサイン
・ソワソワして落ち着かない
・クルクルと回る
・しきりと周囲の匂いをかぐ
失敗しても絶対に叱ってはダメ!

―万が一、トイレを失敗してしまったら、厳しく叱ってもいいですか?
鹿野:絶対に叱ってはいけません。排泄は犬にとって反射的な行動なため、叱っても何が悪いのか犬には理解できません。
飼い主さんは、「本来の場所とは違うところで排泄したこと」を叱っていると思いますが、愛犬には「トイレ以外の場所で排泄することは悪いこと」とは考えることができず、飼い主さんに対する恐怖心だけを感じてしまいます。
そのため、排泄をする際に飼い主さんに怒られて怖い思いをしないように、隠れて排泄をするようになってしまいます。
生後12か月くらいまでは、完全にトイレのしつけはできないものと割り切って、失敗を受け入れましょう。
なお、成長するにしたがって、トイレの大きさが合わなくなっていることも、失敗の原因かもしれません。
適宜サイズを交換するなどの工夫をしてください。
また、先に述べたとおり、愛犬は排泄の匂いがするところに、繰り返し排泄をしてしまう傾向があります。
万が一、失敗してトイレではない床の上などに排泄してしまい、そこに匂いが残っていると、またそこに排泄してしまうおそれも。
失敗した際は、有機物と匂いを分解する働きのある酵素洗剤(界面活性剤が含まれている製品)を使って、完全に匂いを取り去るように洗浄してください。
犬の嗅覚は人の1億倍もあるので、消臭スプレーだけでは匂いを取り切れません。
屋外でも「トイレシートで排泄」を習慣に

屋外でもトイレシートの上で排泄できれば、後片付けも楽に
―自宅ではトイレの失敗はありませんが、屋外では自由きままに排泄をしてしまいます。どうすればいいでしょうか?
鹿野:屋外は他の犬の排泄物の匂いがあるので排泄が誘発されやすいですし、普段とは異なる環境への不安から、いつもとは違うタイミングで排泄をしてしまう愛犬もいます。
対策としては、散歩などの短時間のお出かけの場合は、家の中や家の敷地内で排泄を済ませてから出かけること。
また、散歩中は愛犬が自由に歩ける時間・場所と、飼い主の側について歩く時間・場所のメリハリをつけることが基本です。
必要以上の排泄を誘発しないように、排泄をして困る場所や迷惑がかかる場所では、リードを短く持って他の犬の匂いを嗅がせすぎないようにすることも大切です。
その際、リードを短く持つと首が苦しくなりやすいので、引っ張り防止用のハーネスなどを利用すると飼い主さんと愛犬の負担を軽減することが出来ます。

屋外でのトイレトレーニングのゴールは、コマンドに従ってトイレシートの上で排泄できるようになること。
次の手順を繰り返して、無理なく愛犬の排泄行動をコントロールできるようにしましょう。
1)愛犬が排泄の気配を見せたら、トイレシーツを敷く
2)「トイレ」などのコマンドをかけながらリードを緩め、トイレシートの上に誘導する
3)トイレシートの上で排泄を促す
もちろん、すぐにできるようになる愛犬ばかりではありませんが、根気強く教えることで、多くの愛犬が屋内外を問わず、トイレシートの上で排泄ができるようになり、自宅ではもちろん、おでかけ先や移動中の排泄の失敗もぐっと少なくなります。
子犬のうちから正しい排泄習慣を身に付けられるよう、なるべく早い段階でトレーニングを始めるようにしましょう。
次回は、おでかけ先でトラブルになることも多い「吠え」の悩みを解消するトレーニング法について、解説します。

【鹿野先生のおでかけレッスン ワン・2・3!】Vol.3 吠えを抑制するトレーニング

【ドッグトレーナー監修】犬のコマンドとは?犬のコマンドの種類やトレーニングの仕方、注意点やポイントは
監修者情報

鹿野 正顕(学術博士)
・学歴(大学・院、学部、専門分野) 麻布大学大学院 獣医学研究科 博士後期課程修了 専攻:人と動物の関係学、犬の行動学 麻布大学介在動物学研究室(旧 動物人間関係学研究室)にて、人と犬の関係、特に犬の問題行動やトレーニングの研究を行い、人と犬の関係学の分野で日本初の博士号を取得。 ・資格 CPDT-KA(Certified Professional Dog Trainer - Knowledge Assessed) (世界最大家庭犬トレーナー資格) ・youtubeチャンネル 「スタディ・ドッグ・スクール 」 動物行動学博士&国際ライセンスドッグトレーナーが犬の習性や能力から飼い方やしつけまで目からウロコの情報を幅広く発信。 チャンネル登録はこちらから↓ https://www.youtube.com/channel/UCqSmNCaYUEUFObbBW4Xn9nw ・職業 スタディ・ドッグ・スクール® 代表 株式会社 Animal Life Solutions(ALS) 代表取締役社長 ・所属団体、学会 日本ペットドッグトレーナーズ協会(JAPDT) 理事長 動物介在教育療法学会(ASAET) 理事 ・受賞歴 平成16年度さがみはら青年アントレプレナービジネスコンテスト 優秀賞 ・著書 ◆ 「犬の行動学入門」 監修:森 裕司 著:鹿野 正顕/中村 広基 ◆ 「アニマルセラピー入門」 編集:NPO法人 ひとと動物のかかわり研究会 監修:太田 光明 ◆ DVD「子犬と暮らす前に 準備と選び方」 ◆ DVD「子犬を家に迎えたら 飼い方・しつけ方」 販売元:アイディーマグネテック株式会社 監修:鹿野 正顕 ◆ 建築知識 創刊60周年記念出版「犬のための家づくり」 発行:エクスナレッジ ◆Oral tyrosine changed the responses to commands in German shepherds and Labrador retrievers but not in toy poodles Masaaki Kano,Hidehiko Uchiyama,Mitsuaki Ohta,Nobuyo Ohtani (2015) ◆ 応急仮設住宅における人とペットが共棲する住環境に関する音響特性評価 浅見 樹里, 田村 雅紀, 金巻 とも子, 鹿野 正顕, 長谷川 成志 ジャーナル:工学院大学総合研究所・都市減災研究センター (Research Center for Urban Disaster Mitigation: UDM) 研究報告書 (平成25年度) ・職業上でのペットとの関わり ドッグトレーナーとして飼い主指導 獣医師、ドッグトレーナーなどの専門家に対する犬の行動・しつけ・トレーニング等の教育 学校機関での専門家の育成 メディアを通した情報発信 企業に対するペット関連コンサルタント ・飼っている動物 スタンダード・プードル(♀:柔、11歳) ・ペット歴 犬:Mix(4匹)、ミニチュアシュナウザー(1匹)、ジャーマンシェパード(1匹) スタンダード・プードル(1匹) ネコ:2匹 シマリス:2匹 ウサギ:1羽 セキセイインコ:5羽 ・ポリシー(ペットに関する) 動物の習性を客観的に理解し、人と動物互いのバランスを保った共生を追求する ・エピソード(ペットに関する) 畜産を兼業していた農家出身の両親は、ともに動物が好きだったことから、よく捨てられた犬を拾ってきて家で飼っていました。そのため、私は幼少のころから常に犬と一緒の生活を送り、鍵っ子だった私の寂しい気持ちを犬はいつも癒してくれ支えとなってくれました。 当時の犬の飼い方は今とは全く異なり、犬は外で飼うのは当たり前で予防接種をしたり動物病院に連れていくこともあまり一般的ではありませんでした。特に私の父親は、戦後間もない、物のない時代で生まれ育ったため、動物にお金をかける意識が低く、予防接種や病気の治療なども満足には行わなかったため、我が家の犬たちも非常に短命で、大学に進学するまでの12年間で4頭もの犬を飼育してきました。 そんな犬の飼い方に、幼いころから何となく疑問を感じていた私にとって、小学生の頃、今の仕事を志すようになった衝撃的な事件が起きました。避妊もしていなかった我が家の犬は、ある日、家に迷い込んできた野犬と交配してしまい、自宅で1匹の子犬を産みました。私は父に、産まれた子犬を飼うことをお願いしましたが、2頭も同時に飼うことができないという理由で拒まれてしまいました。そこで、子犬の里親を見つけることを懇願すると、父は承諾をしてくれたと思ったのですが、次の日の朝、子犬はいませんでした。 気が動転した私は、すぐに父のもとへ行き子犬の行方を尋ねると、父は夜中に山に捨ててきたと答えました。ショックでした。言葉が出ないくらい、頭の中が真っ白になるぐらいショックでした。私は、泣きじゃくりながら父親に怒りをぶつけましたが、もうその子犬が家に帰ってくることはありませんでした。 このことがきっかけで、私は、「犬をもっともっと大切にする社会に変えたい」、「家族の一員としてもっともっと犬との絆を深められる社会にしたい」、そう決意し犬の専門家になることを強く志し、「犬とのより良い共生社会の確立」という夢をかなえるべく、麻布獣医大学の獣医学部動物応用科学科に進学をしました。 大学院の博士課程が修了後、同じ志をもち、共に学生時代に犬の研究チームをまとめ、同期共に、さらなる夢をかなえるべく、大学のベンチャー企業として株式会社アニマルライフ・ソリューションズを立ち上げ、現在でも「犬とのより良い共生社会の確立」を目指した事業活動を行っています。
…続きを読むライタープロフィール

相山 華子 Hanako Aiyama
【経歴】 1997 年慶應義塾大学卒業。同年、株式会社山口放送(日本テレビ系列)に入社、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修、翻訳(英語→日本語)も手掛ける。 【受賞歴】 サントリー「横浜開港150周年記念エッセイコンテスト」最優秀賞受賞、 JR東日本「列車の旅エッセイコンテスト」最優秀賞受賞 など 【資格】 英検1級、ファイナンシャル・プランナー(AFP) 【暮らし】 仕事でもプライベートでも「いろんなところに行って、いろんな人に会う」のが信条。好きな旅のスタイルは鉄道旅。最近は家族で秘境駅巡りを楽しんでいる。大型犬好きで、これまでに飼った犬種はドーベルマンとラブラドール・レトリバー。
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