【鹿野先生のおでかけレッスン ワン・2・3!】Vol.3 吠えを抑制するトレーニング

愛犬とのおでかけを安心して楽しむためのトレーニングを学ぶシリーズ3回目は、「吠えを抑制するトレーニング」です。おでかけ先で愛犬が吠え続けて周囲に迷惑をかけてしまわないようにするには、どんなトレーニングが有効なのでしょうか?ドッグトレーナーの鹿野正顕先生に教えていただきました。

【鹿野先生のおでかけレッスン ワン・2・3!】Vol.3 吠えを抑制するトレーニング

「無駄吠え」をする愛犬はいない。すべての吠えには理由がある

「無駄吠え」をする愛犬はいない。すべての吠えには理由がある

―そもそも愛犬は、なぜ吠えてしまうのでしょうか?

鹿野正顕(かのまさあき)先生(以下、鹿野):
飼い主さんから「うちの子が無駄吠えをしてしまって…」というご相談を受けることがあるのですが、愛犬が「無駄吠え」、つまり何の意味もなく吠えることはありません。

愛犬が吠えるのには必ず何らかの原因があるので、吠えを抑えるには、その原因を取り除いてあげる必要があります。
まずは、愛犬が発する声に、どんな意味があるのかを知ることから始めましょう。

愛犬が発する声の種類は大きく分けて「吠え声」「満足げな鼻声」「唸り声」「悲しそうな鼻声」の4つ。
それぞれの声が表す愛犬からのサインや意味をまとめると、次のようになります。

声の種類サインや意味
吠え声・防衛 ・遊戯(遊び)・挨拶 ・寂しさ
・注目の喚起(注目してほしい) ・警鐘
満足げな鼻声
(満足そうに鼻を鳴らす)
・挨拶 ・満足のサイン
唸り声・防衛的警告 ・脅威のサイン ・遊戯(遊び)
悲しそうな鼻声
(悲しそうに鼻を鳴らす)
・服従 ・防衛 ・挨拶 ・痛み ・関心を引く(かまってほしい)
吠え声は、愛犬の意思表示の1つ

吠え声は、愛犬の意思表示の1つなので、吠えること自体はごく自然な行為です。

しかし、抑制しても過剰に吠え続ける場合は、愛犬が何らかの問題を抱えている可能性があります。

動物行動学では、愛犬が過剰に吠え続ける原因として、主に以下の5点を上げています。

【愛犬が過剰に吠えてしまう主な原因】

・遺伝的要因(警戒心の強さなど犬種や個体の特性)

・性ホルモン(テストステロン※)の影響 ※男性ホルモンの1種

・社会化不足

・学習(嫌悪学習=過去の嫌な経験に起因する恐怖)

・欲求不満(行動ニーズが満たされていない)

このうち、遺伝的要因や性ホルモンの影響については、飼い主さんが解決することは難しいですが、社会化不足や学習(過去の嫌な経験に起因する恐怖)、欲求不満については、日頃の生活習慣やトレーニング次第で、緩和もしくは解消することができます。

愛犬の様子をよく観察して思い当たる問題があれば、まずはその問題を解決するようにしてください。

愛犬の吠え予防① 行動ニーズを満たす

行動ニーズを満たす

―まず、日々の生活習慣ではどんな点に気をつければよいでしょうか?

鹿野:
愛犬の行動ニーズを満たすように心がけましょう。具体的には以下の点に注意してください。

・散歩時間をしっかり確保する

・散歩では単に歩くだけではなく、遊びを通じて運動欲求を満たす

・長時間の留守番を避ける⇒愛犬用幼稚園/保育園の利用を検討する

・室内での行動範囲を制限しすぎない⇒サークルやクレートに長時間入れっぱなしはNG

・社会性を身につけさせる⇒子犬の頃から様々な環境に連れていき、経験値を高める

たくさん遊んでストレスを解消してあげるのも効果的

たくさん遊んでストレスを解消してあげるのも効果的

愛犬の吠え予防② 環境を整える

外が気になって吠えてしまう犬は多い

外が気になって吠えてしまう犬は多い

―自宅にいるときも、特定の人や音に反応して吠えてしまいます。どうすればいいでしょうか?

鹿野:
特定の人や音に反応して吠えてしまう場合も、社会化不足や欲求不満、嫌悪学習(過去の嫌な経験)など、さまざまな理由が考えられます。

自宅でできる予防策の基本は、愛犬がこれらの人や音を見聞きしないで済む環境を整えること。
まずは、愛犬が普段過ごしている場所を見直してみてください。

特に注意したいのはクレートやサークルの置き場所。
外の物音や人の話し声が聞こえたり、人や乗り物、動物(他の犬や猫、鳥など)の動きが見えたりすると、気になって吠えてしまう愛犬が多いので、なるべく窓から離れた場所に設置するようにしてください。
同じ理由で、外の物音や気配が伝わりやすい玄関も避けたほうが良いでしょう。

どうしても愛犬の居場所から外が見えてしまう場合は、カーテンを閉める・サンシェードや葭簀(よしず)を使うなどして、外が見えにくくする工夫を。
外の物音が聞こえないように、テレビやラジオをつけておいたり、CDで音楽を流したりしておくのも一案です。

外の様子が気になって吠える原因となるため、窓際はNG

外の様子が気になって吠える原因となるため、窓際はNG

また、愛犬が吠える対象の人や物が特定できる場合は、その対象をリストアップしておき、できるかぎり接触を避けるように心がけましょう。

やむをえず接触してしまいそうになったら、とっておきのご褒美を与え、関心をそらすように誘導します。
その場合、多少吠えてしまってから与えても問題ありません。

来客時の吠え予防には「インターホンが鳴る⇒ご褒美を与える」を繰り返して

見知らぬお客さんに恐怖・警戒心を抱いてしまう愛犬も

見知らぬお客さんに恐怖・警戒心を抱いてしまう愛犬も

―来客があると、インターホンが鳴っただけで吠えてしまう愛犬も多いようです。来客に対して吠えさせない方法はありますか?

鹿野:
来客時に愛犬が吠えてしまうのは、多くの場合、見知らぬ人への恐怖や警戒心を抱いているからです。

愛犬にとって来客は自分の縄張りに突如侵入してきた部外者にほかなりません。
ですから、お客さんと愛犬を仲良くさせようと、玄関で愛犬を抱っこしてお客様と対面させるのは、避けたほうが良いでしょう。

抱っこされて、体が自由にならない状態で見知らぬ人に接しなくてはならない状態は、愛犬に「恐怖心」を与える可能性が非常に高いのです。
ますます来客が苦手になって、さらに吠えるようになってしまいます。

来客に無理に慣れさせようとするのではなく、「インターホンが鳴る(来客)=良いことがある」ことを学習させましょう。
具体的な方法は以下のとおりです。

1. 日頃の練習

① とっておきのご褒美(愛犬が吠えるのも忘れてしまうほど魅力的な食べ物)を常備しておく

② 家族の中でインターホンを鳴らす役の人とご褒美を与える人の2人に分かれ、「インターホンが鳴る⇒①のご褒美を与える」の練習を繰り返す(多少吠えてから与えても問題ない)


※家族の誰かが帰宅する際に、インターホンを鳴らしてから家に入るようにし、家の中にいる人はインターホンが鳴ったらとっておきのご褒美を与える。
10回程度繰り返してから家の中に入るようにする

2. 実際に来客が来た場合の対応

①配達など実際の来客が来た際は、まずは接客の間とっておきのご褒美が食べ続けられるようにコングなどの知育玩具にご褒美を詰めて愛犬に与える

②愛犬が大好きなご褒美を食べ始めてから接客をする。その際、玄関まで来れないようにドアは閉めておく

まずは、おやつを与えてから接客を

まずは、おやつを与えてから接客を

また、お客さんを家の中でおもてなしする場合も、愛犬に食べ続けられるように工夫したおやつ(おやつを詰めたコングや愛犬用のガムなど)を与えて、お客さんからおやつに関心を向けさせ、その上で接客するようにしてください。

おでかけには必ず「ご褒美」を持参して、苦手な人・ものから関心をそらすこと

知らない人、自転車、騒音…外には愛犬が苦手なものがいっぱい

知らない人、自転車、騒音…外には愛犬が苦手なものがいっぱい

―外出先で他の犬や知らない人に吠えてしまうため、おでかけが楽しめないという飼い主さんも多いようです。どうすればよいでしょうか?

鹿野:
おでかけ先で吠えてしまう理由も、基本的には自宅で吠えてしまう理由と同じです。

特に外出先には自宅より愛犬にとって怖いもの・苦手なものが多い上に、これまで経験したことのない未知の場面への不安もあるので、いつもより吠えてしまう可能性が高くなります。

おでかけ先での吠えを抑制するポイントは、以下のとおりです。

① 社会性を培う
子犬の頃から積極的に様々な場面を経験させ、社会化トレーニングを行う。

② 吠えやすい場面、人、物を極力避ける
吠えやすい場面や人、物をリストアップしておき、吠えやすい人や物に遭遇しやすい場所には敢えて近づかないようにする。
あるいは最初は刺激が少ない場所にでかけ、少しずつ刺激の多い場所に連れて行くなど、段階を踏んで「新しい場所」に慣れさせると良い。

③ ご褒美を持参する
近所への散歩でも遠くへの旅行でも、おでかけには必ずご褒美を持参する。
飼い主さんは常に周囲に目を配り、愛犬が苦手なもの・いつも吠えてしまう人やものが近づいたら、すぐにご褒美を与え、苦手なものや人から関心をそらすようにする。

苦手な人やものが近づいたら、すぐにご褒美を与えて関心をそらす

苦手な人やものが近づいたら、すぐにご褒美を与えて関心をそらす

例)散歩中に苦手な「男性」が近づいてきたとき

愛犬が散歩中に知らない男性に吠えてしまう場合は、飼い主さんが男性に気づいた時点で、すぐに愛犬にご褒美を。

ただし、ご褒美をすぐに食べさせず、男性とすれ違うまで舐め続けるように与えます。
そのため、液体状のおやつを使ったり、コングなどの知育玩具にお褒美を詰めて舐めさせると与えやすいです。

何度も繰り返していくうちに、「男性が来る=ご褒美がもらえる」ことを学び、男性への意識が弱まり飼い主さんへの集中が高まることで次第に吠えなくなります。

自転車やバイクの場合も同様にトレーニングしましょう。

安全対策も飼い主さんの責任

安全対策も飼い主さんの責任

鹿野:なお、おでかけ先では知らない人や犬に噛み付いたり、飛びかかって怪我をさせてしまったり、思わぬ事故を引き起こしてしまったりする可能性も想定しておかねばなりません。

おでかけする際にはリスク回避のために、ハーネス(引っ張り防止機能のあるハーネスがおすすめ)を使用する・何かあったときにすぐに対処できるように両手を空けておく(リュックや肩掛けカバンを使用する)など、飼い主さん自らの配慮や準備が欠かせません。

いずれにせよ、吠えを抑制できないと、愛犬との外食や外泊も難しくなってしまい、おでかけの楽しみも半減してしまいます。
子犬の頃から社会化と吠え抑制のトレーニングに取り組み、愛犬と心置きなくおでかけできるようにしたいものです。

なお、繰り返しトレーニングしても吠えが改善できない場合は、プロのドッグトレーナーに相談してアドバイスや専門的なトレーニングを受けることも検討してください。

次回も愛犬とのおでかけを楽しむために実践しておきたいトレーニングをご紹介します。

監修者情報

鹿野 正顕(学術博士)

鹿野 正顕(学術博士)

・学歴(大学・院、学部、専門分野) 麻布大学大学院 獣医学研究科 博士後期課程修了  専攻:人と動物の関係学、犬の行動学 麻布大学介在動物学研究室(旧 動物人間関係学研究室)にて、人と犬の関係、特に犬の問題行動やトレーニングの研究を行い、人と犬の関係学の分野で日本初の博士号を取得。 ・資格 CPDT-KA(Certified Professional Dog Trainer - Knowledge Assessed) (世界最大家庭犬トレーナー資格) ・youtubeチャンネル 「スタディ・ドッグ・スクール 」 動物行動学博士&国際ライセンスドッグトレーナーが犬の習性や能力から飼い方やしつけまで目からウロコの情報を幅広く発信。 チャンネル登録はこちらから↓ https://www.youtube.com/channel/UCqSmNCaYUEUFObbBW4Xn9nw ・職業 スタディ・ドッグ・スクール® 代表 株式会社 Animal Life Solutions(ALS) 代表取締役社長 ・所属団体、学会 日本ペットドッグトレーナーズ協会(JAPDT) 理事長 動物介在教育療法学会(ASAET) 理事 ・受賞歴 平成16年度さがみはら青年アントレプレナービジネスコンテスト 優秀賞 ・著書 ◆ 「犬の行動学入門」 監修:森 裕司 著:鹿野 正顕/中村 広基    ◆ 「アニマルセラピー入門」   編集:NPO法人 ひとと動物のかかわり研究会 監修:太田 光明 ◆ DVD「子犬と暮らす前に 準備と選び方」   ◆ DVD「子犬を家に迎えたら 飼い方・しつけ方」 販売元:アイディーマグネテック株式会社 監修:鹿野 正顕 ◆ 建築知識 創刊60周年記念出版「犬のための家づくり」 発行:エクスナレッジ ◆Oral tyrosine changed the responses to commands in German shepherds and Labrador retrievers but not in toy poodles   Masaaki Kano,Hidehiko Uchiyama,Mitsuaki Ohta,Nobuyo Ohtani (2015) ◆ 応急仮設住宅における人とペットが共棲する住環境に関する音響特性評価 浅見 樹里, 田村 雅紀, 金巻 とも子, 鹿野 正顕, 長谷川 成志 ジャーナル:工学院大学総合研究所・都市減災研究センター (Research Center for Urban Disaster Mitigation: UDM) 研究報告書 (平成25年度) ・職業上でのペットとの関わり ドッグトレーナーとして飼い主指導 獣医師、ドッグトレーナーなどの専門家に対する犬の行動・しつけ・トレーニング等の教育 学校機関での専門家の育成 メディアを通した情報発信 企業に対するペット関連コンサルタント ・飼っている動物 スタンダード・プードル(♀:柔、11歳) ・ペット歴 犬:Mix(4匹)、ミニチュアシュナウザー(1匹)、ジャーマンシェパード(1匹) スタンダード・プードル(1匹) ネコ:2匹 シマリス:2匹 ウサギ:1羽 セキセイインコ:5羽 ・ポリシー(ペットに関する) 動物の習性を客観的に理解し、人と動物互いのバランスを保った共生を追求する ・エピソード(ペットに関する) 畜産を兼業していた農家出身の両親は、ともに動物が好きだったことから、よく捨てられた犬を拾ってきて家で飼っていました。そのため、私は幼少のころから常に犬と一緒の生活を送り、鍵っ子だった私の寂しい気持ちを犬はいつも癒してくれ支えとなってくれました。  当時の犬の飼い方は今とは全く異なり、犬は外で飼うのは当たり前で予防接種をしたり動物病院に連れていくこともあまり一般的ではありませんでした。特に私の父親は、戦後間もない、物のない時代で生まれ育ったため、動物にお金をかける意識が低く、予防接種や病気の治療なども満足には行わなかったため、我が家の犬たちも非常に短命で、大学に進学するまでの12年間で4頭もの犬を飼育してきました。  そんな犬の飼い方に、幼いころから何となく疑問を感じていた私にとって、小学生の頃、今の仕事を志すようになった衝撃的な事件が起きました。避妊もしていなかった我が家の犬は、ある日、家に迷い込んできた野犬と交配してしまい、自宅で1匹の子犬を産みました。私は父に、産まれた子犬を飼うことをお願いしましたが、2頭も同時に飼うことができないという理由で拒まれてしまいました。そこで、子犬の里親を見つけることを懇願すると、父は承諾をしてくれたと思ったのですが、次の日の朝、子犬はいませんでした。  気が動転した私は、すぐに父のもとへ行き子犬の行方を尋ねると、父は夜中に山に捨ててきたと答えました。ショックでした。言葉が出ないくらい、頭の中が真っ白になるぐらいショックでした。私は、泣きじゃくりながら父親に怒りをぶつけましたが、もうその子犬が家に帰ってくることはありませんでした。  このことがきっかけで、私は、「犬をもっともっと大切にする社会に変えたい」、「家族の一員としてもっともっと犬との絆を深められる社会にしたい」、そう決意し犬の専門家になることを強く志し、「犬とのより良い共生社会の確立」という夢をかなえるべく、麻布獣医大学の獣医学部動物応用科学科に進学をしました。  大学院の博士課程が修了後、同じ志をもち、共に学生時代に犬の研究チームをまとめ、同期共に、さらなる夢をかなえるべく、大学のベンチャー企業として株式会社アニマルライフ・ソリューションズを立ち上げ、現在でも「犬とのより良い共生社会の確立」を目指した事業活動を行っています。

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ライタープロフィール

相山 華子 Hanako Aiyama

相山 華子 Hanako Aiyama

【経歴】 1997 年慶應義塾大学卒業。同年、株式会社山口放送(日本テレビ系列)に入社、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修、翻訳(英語→日本語)も手掛ける。 【受賞歴】 サントリー「横浜開港150周年記念エッセイコンテスト」最優秀賞受賞、 JR東日本「列車の旅エッセイコンテスト」最優秀賞受賞 など 【資格】 英検1級、ファイナンシャル・プランナー(AFP) 【暮らし】 仕事でもプライベートでも「いろんなところに行って、いろんな人に会う」のが信条。好きな旅のスタイルは鉄道旅。最近は家族で秘境駅巡りを楽しんでいる。大型犬好きで、これまでに飼った犬種はドーベルマンとラブラドール・レトリバー。

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