【獣医師監修】愛犬に子犬を出産させる?自家繁殖のリスクと注意点を解説!

愛犬に子犬を産ませるか迷っている飼い主さんは、この記事を参考にしながら検討をしてみてください。愛犬の出産に関して必要な知識をはじめ、愛犬や子犬の健康を守ることの大切さ、法律の視点から見た自家繁殖における注意点など、重要なポイントを解説します!

【獣医師監修】愛犬に子犬を出産させる?自家繁殖のリスクと注意点を解説!
出典 : pixta_68830656

愛犬の子犬を産ませる前に知っておきたいポイント

愛犬の子犬を産ませる前に知っておきたいポイント

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「愛犬にそっくりな子犬が欲しい。愛犬の子犬の顔が見てみたい!」というような理由から、愛犬に子犬を産ませたいと考える飼い主さんもいることでしょう。
けれども、そのような動機で安易に自家繫殖をするのはおすすめできません。
以下のポイントを、まずは考慮してみてください。

犬は安産とは言えない

犬は安産の象徴とされています。
確かに柴犬などの日本犬は安産の傾向が高いですが、短頭種をはじめさまざまな犬種で、実際は難産になるケースも多々。
母子ともに命の危機にさらされたり、お産の手伝いが大変なケースや、動物病院での緊急処置が必要になるケースもあります。

人間のような“おしるし”と呼ばれるような兆候は犬にはなく、犬は出産が近づくと体温が下がり、頻尿になる、軟便になる、落ち着きがなくなるといった行動が見られます。
陣痛が始まりスムーズに自然分娩が進めば、助産は必要ないでしょう。
けれども、破水をしても30分以上子犬が生まれなかったり、陣痛が微弱のまま長時間が経過したら、胎児の命を救うために動物病院で陣痛促進剤を用いたり、帝王切開手術を行わなければなりません。

愛犬の交配前や妊娠中の健康診断をはじめ、動物病院での緊急の助産や帝王切開手術(ほとんどのペット保険が補償対象外)などにかかる費用面でも万全な準備が必要です。

遺伝病の管理が必要

ほぼすべての犬種は、人間の手によって改良され固定化されてきました。
その過程で、犬種ごとに発症しやすい遺伝性疾患が存在します。

たとえば、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルであれば、大多数が他犬種に比べて若いうちから心疾患のひとつである僧帽弁閉鎖不全症を発症します。
ウェルシュ・コーギー・ペンブロークでは、歩行困難に陥る変性性脊髄症(DM)になる遺伝子を持っている血統が少なくありません。
有効な治療法がなく、最終的には失明する眼疾患である進行性網膜萎縮症(PRA)も、トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー、ミニチュア・ダックスフンドなどをはじめ、遺伝的に発症しやすい血統が複数の犬種で確認されています。

キャバリアに関しては、原産国のイギリスを中心に僧帽弁閉鎖不全症にかかりにくい血統の犬を使っての選択交配を始めてから、徐々に若年での発症例が減少してきています。
大型犬に多い股関節形成不全も、繁殖段階でのコントロールによりかなり減少してきました。
前述のDMやPRAなどは、遺伝子検査が可能です。
その結果で「クリア」と判定された犬同士を交配すれば、発症が食い止められると同時に、後世に遺伝性疾患を受け継がずに済むでしょう。

“犬種の番人”とも言われる世界中の良心的で意識の高いブリーダーは、所有する犬たちに遺伝子検査を行ったり、遺伝病を出さない選択交配を心がけながら、遺伝性疾患のコントロールを行っています。
もし愛犬の出産を考えているのであれば、愛犬の犬種の遺伝性疾患に関する知識も必要です。

毛色やサイズによる交配のタブーがある

犬の繁殖は、毛色も考慮しながら慎重に行う必要があります。

たとえば、ダックスフンドやチワワなどは、毛色の掛け合わせでタブーとされる交配によって、子犬に先天性疾患や健康上のトラブルが発現する可能性があります。

トイ・プードルには毛色によって避けるべき掛け合わせはありませんが、犬種標準より小さな体格のトイ・プードルの交配は、健全性の面から好ましくないと、ジャパンケネルクラブ(JKC)などが注意喚起をしています。

神経質すぎたり、極端に攻撃的であったり、気質に問題がある犬も交配に用いないことが、ブリーダーの間では常識とされています。

新生児の管理や育児が大変

当然のことながら、子犬がすべて健康で生まれるとは限りません。
死産であったり、遺伝性疾患はなくても、先天性疾患や奇形を持って産まれることもあります。
また、母犬が子犬の育児を放棄するケースもあります。
そうすると、人間が人工授乳で子犬を育てなければならず、離乳するまでは飼い主さんは数時間ほどの外出しかできないでしょう。
新生児は体温調節機能が未発達なため、温度管理もとても大変です。
子犬が産まれたらすることは、母犬だけにまかせられず飼い主さんにもたくさんあります。

動物取扱業の登録がないと有償譲渡はできない

動物取扱業の登録がないと有償譲渡はできない

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小型犬の出産ではそれほど多数の子犬は産まれませんが、それでも自宅にすべての子犬を残すのはむずかしいかもしれません。
その場合、友人や知人など、子犬の引き取り先を探すのに苦労する可能性もあります。

なお、犬を繁殖させて他人に有償譲渡するには、動物取扱業の登録をすることが法律で義務付けられています。

もし愛犬に子犬を産ませることを検討しているのであれば、犬の出産に関する注意点や法律上の決まりを熟慮した上で、ソフト面でもハード面でも十分な準備をするようにしたいものです。

まとめ

まとめ

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犬は決して安産ではありません。
また、遺伝病や毛色による掛け合わせの知識など、犬の繁殖にはある程度の知識が必要です。
愛犬に出産をさせるかどうかは、慎重に考慮した上で判断しましょう。

特定の犬種の子犬が欲しくなったら、安易な気持ちで自家繁殖をするのではなく、遺伝性疾患や気質やサイズといった多くの問題をクリアして健全な犬を後世に残そうと努力しているブリーダーから迎えるのがベストだと言えます。

正しい知識を得て役立てながら、愛犬と楽しい日々を過ごしてくださいね!

監修者情報

箱崎 加奈子(獣医師)

箱崎 加奈子(獣医師)

・学歴、専門分野 麻布大学獣医学部獣医学科 ・資格 獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルアロマセラピスト ・職業 獣医師 ペットスペース&アニマルクリニックまりも ・所属団体、学会 一般社団法人女性獣医師ネットワーク(代表理事) ・著書(一部) 1 最新版 愛犬の病気百科 著者名: 愛犬の友編集部 編 2 愛犬をケガや病気から守る本 著者名: 愛犬の友編集部 編 ・職業上でのペットとの関わり 普段犬猫の診察をしています。 飼育放棄や動物愛護センター収容の犬猫の保護譲渡活動をしています。 ・飼っている動物 シーズー ・ペット歴 ハムスター、うさぎ、ハリネズミ、犬(シーズー、ヨークシャテリア) ・ペットへの想い 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。 現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。 毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。 プライベートでは一児の母。 愛犬はシーズー。 家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています ・ペットに関するエピソード シーズー2頭、ヨークシャの全部で3頭の多頭飼いをしていました。 2頭は天寿を全うし、今はシーズーの澪(みお)が1頭です。 動物を飼育する習慣のない家庭に育ちましたので、この仕事に就こうと決めた時に初めて犬を飼いました。 犬初心者からトリマー、トレーナー、獣医と、飼い主目線で自分の愛犬に必要なスキルを身につけました

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ライタープロフィール

臼井 京音 Kyone Usui

臼井 京音 Kyone Usui

フリーライター、ドッグジャーナリスト 【経歴】 日本文学を専攻しバックパッカーもしていた大学卒業後、旅行ガイドブックの編集プロダクション勤務を経て、フリーライターに。30代前半でオーストラリアにドッグトレーニング留学をしたのち、現在はドッグジャーナリスト。 2007年から2017年まで東京都で“犬の幼稚園Urban Paws”の園長&家庭犬トレーニングインストラクターとしても活動。 東京都中央区 動物との共生推進員。 【執筆歴】 小学生時代から愛読していた雑誌『愛犬の友』をはじめ、多数の書籍や媒体で犬をはじめペットに関する執筆活動を行う。Webサイト「ニッポン放送ニュースオンライン」にて『ペットと一緒にby臼井京音』連載中。 著書:タイの犬の写真集『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本』 これまでの執筆・編集歴は、毎日新聞の「臼井京音の幸せ犬ぐらし」連載コラム、AllAbout「犬の健康」、『週刊AERA』、季刊誌『BUHI』、書籍『フレンチブルドッグ生活の家計簿』、書籍『きみとさいごまで』、書籍編集『愛犬をケガや病気から守る本』、書籍編集『最新版 愛犬の病気百科』など。 【ペット歴】 小学生時代からシマリス、カメ、ミジンコ、カエル、ハムスター、メダカ、最初の愛犬ヨークシャー・テリアなどと生活し、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らしています。 室内外で保護犬やブリーダーから迎えた犬を多頭飼育していた祖父母や、獣医師の叔父、シャム猫を溺愛していた祖母の影響で、生まれた時からずっと動物に囲まれてきました。人と動物のよりよい関係を願い、日々取材と執筆を行っています。

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