【獣医師監修】犬が飼い主(人)の顔を舐める理由は愛情表現?

愛犬が飼い主さんの顔を舐めてくるのはなぜでしょうか?その理由をはじめ、舐めさせないほうが良いか、顔を舐めるのをやめさせる方法などを解説します。また、愛犬が自分の身体やほかの物を舐める原因についても知っておき、愛犬の健康管理に役立てましょう。

【獣医師監修】犬が飼い主(人)の顔を舐める理由は愛情表現?
出典 : pixta_25240730

犬が飼い主の顔を舐める理由は?

犬が飼い主の顔を舐める理由は?

pixta_69684788

犬は愛情を示す行動のひとつとして、犬やほかの動物の身体を舐めるという習性があります。
最大級の愛情表現は、口を舐めること。
これは、野生時代の名残りで、離乳期の子犬が母犬に食べ物をねだる際、口周りを舐める行動に由来します。
母犬は子犬に口を舐められると、柔らかくなった食べ物を吐き出して与えます。
母犬は、食後の子犬の汚れた口元を舐めたり、子犬の目の周りやお尻を舐めて汚れを取ってあげたりもします。
身体を舐め合うことには、母子の絆を深めるという意味合いもあるのです。

オオカミなど野生のイヌ科の動物の群れでは、服従心を示すために、相手の顔を舐める行動も確認されています。

現代の犬たちは、飼い主さんの顔を舐めたところで食べ物をもらえるわけではありませんが、飼い主さんへの愛情を示すスキンシップの一環として舐めているのは間違いないでしょう。

犬が飼い主の顔を舐めてきたときの注意点

犬は飼い主さんの顔以外にも、さまざまなものを舐める習性があります。
まず、排尿後に、犬自身がお尻まわりを舐めてきれいにする行動はよく目にするのではないでしょうか。
そのほか、興味のあるものの臭いを嗅いだあとに、舐めて味を確かめようとする場合もあります。
たとえば、電柱についたほかの犬の尿などです。
さらに、犬によっては食糞(うんちを食べてしまう行動)が見られることもあるでしょう。
尿や便などがついている愛犬の舌で、飼い主さんが顔を舐められるのは衛生的とは言えません。

また、7割ほどの犬は、パスツレラという常在菌を口腔内に持っています。
犬には悪い影響のない菌ですが、免疫力が低下している人や基礎疾患を持つ人などでは、パスツレラ感染症という人獣共通感染症を発症する恐れがあります。

これらを考えると、もし愛犬が顔を舐めてきたら、すぐに水洗いをしたりウェットティッシュで拭くなどしたほうが良いでしょう。
特に口は、感染症の原因にもなるので舐めさせないようにしてください。

犬が顔を舐めるのをやめさせる方法

犬が顔を舐めるのをやめさせる方法

pixta_75149366

犬が人の顔を舐めると、人が病気になる可能性があるほか、衛生面を考えてやめさせたいものです。
顔ではなくて手であれば、愛犬のしつこいペロペロ攻撃に遭っても、人がその手を口や鼻や目に入れない限りは、感染症などになる危険性は低いでしょう。
せっかく愛犬も飼い主さんへの愛情表現をしているのですから、もし顔を舐めてこようとしたら、飼い主さん自身の手で口元を覆って、愛犬が手を舐めるように誘導してください。
ただし、舐められた手はなるべく早く洗って、愛犬の唾液を落とすのも忘れずに。

飼い主さんだけでなく、来客や散歩中に出会う人の顔を舐めようとする愛犬には、まずは“オスワリ”と“マテ”を教えておきましょう。
そして、愛犬が好きな人の顔を舐めようと向かっていきそうになったら、オスワリとマテで行動を抑止するようにしてください。
愛犬が待っている間に相手におやつを渡し、“ヨシ”の解除の合図で相手に手からおやつをあげてもらい、好きな人の手を少し舐めさせてあげるのも良いでしょう。
そうすれば、愛犬も舐められなかったというフラストレーションを抱えずにすみます。

犬が自分の身体やほかの物を舐める理由は?

犬が自分の身体やほかの物を舐める理由は?

pixta_58597873

犬が自分の身体やほかの物を舐めることがあります。
その主な原因は以下のとおりです。

自分の手足やしっぽを舐める理由

犬が足先や尾先などを舐め続けることがあります。
その原因として多いのは、ストレスを発散するため。
飼い主さんとのコミュニケーション不足や運動不足などが生じると、退屈しのぎに足先や尾先を舐めたりかじったりする犬が少なくありません。
また、屋外の物音や雷などに恐怖心を抱き、その不安な気持ちをまぎらわせるために足先や尾先など、自分の口の届く範囲の身体を舐めることもあるでしょう。

物を舐め続ける理由

犬はさまざまな物を舐めますが、床を舐め続けるケースもめずらしくありません。
犬が床や家具を舐める理由は、ひとつは、こぼした食べ物やその匂いがついているから。
けれども、食べ物の匂いが取れたらすぐに舐めるのをやめるでしょう。
床をずっと舐める場合は、愛犬が自分の気持ちを落ち着けようとしているケースが考えられます。
不安な気持ちを、床を舐める行動によって解消しているのです。
退屈でストレスが溜まった時も、床を舐め続けることがあります。
同様に、不安解消やストレス解消を目的に、サークルやクレートなどを舐め続ける犬も見られます。

犬が自分の身体や物を舐めるのをやめさせる方法

犬が自分の身体や物を舐めるのをやめさせる方法

pixta_74736744

犬が自分の身体をずっと舐めると、皮膚の病気の原因になる可能性があります。
また、床やケージなどを舐め続けると、塗料などの化学物質が愛犬の身体に入ってしまう恐れもあります。
愛犬の健康を守るために、愛犬が自分の身体や物を舐め続けるのをやめさせましょう。

ストレスを解消しようとして愛犬が舐め続けているようであれば、まずは、散歩の質や飼い主さんとのコミュニケーションが足りているかを見直してください。
散歩の時間や回数を増やしたり、飼い主さんと室内でトレーニングやスキンシップをしたりして、心身ともに充足感を与えるだけで、自分の身体や床などを舐める行為がなくなるケースも少なくありません。
それでも舐めることが多い場合、フードを仕込める知育玩具や長時間噛めるおやつを与えるのがおすすめです。
舐めるという行為の代わりに、ひとり遊びでストレスを解消させてあげましょう。

なお、自分の足先を舐める愛犬に、人間の子供用の靴下などを履かせたり、包帯を巻いたりする解決策は、物理的に舐められなくはなりますが余計にストレスを与えてしまうことが多いのでおすすめできません。

神経質や怖がりな気質の愛犬が、不安を解消しようとして身体や物を舐めている様子であれば、安心できる居場所を提供してあげてください。
側面と上部が覆われた洞穴のような環境は、犬がとても落ち着けます。
そのような環境にするため、サークルの上部と側面を布などで覆う、室内に扉の開いたクレートを常に置いておくといった工夫をすると良いでしょう。

まとめ

まとめ

pixta_64246908

犬が飼い主さんの顔を舐めるのは、愛情表現のひとつだと考えて良いでしょう。
ただし、犬の口の中は衛生的だとは限らないのと、犬の口腔内の細菌が人にうつって病気になることもあるので、愛犬に人の口は舐めさせないようにしましょう。

また、犬が自分の手足や尾を舐め続けると、皮膚病になる危険性があります。
床やケージなどをずっと舐めることで、塗料などの化学物質を口にしてしまうかもしれません。
愛犬がストレスや不安を解消しようと、身近な物や自分の身体を舐めている場合は、ストレスや不安を取り除くことが重要です。

飼い主さんも愛犬も健康な毎日を過ごせるように、正しい知識を得て役立ててくださいね。

監修者情報

箱崎 加奈子(獣医師)

箱崎 加奈子(獣医師)

・学歴、専門分野 麻布大学獣医学部獣医学科 ・資格 獣医師、トリマー、ドッグトレーナー、アニマルアロマセラピスト ・職業 獣医師 ペットスペース&アニマルクリニックまりも ・所属団体、学会 一般社団法人女性獣医師ネットワーク(代表理事) ・著書(一部) 1 最新版 愛犬の病気百科 著者名: 愛犬の友編集部 編 2 愛犬をケガや病気から守る本 著者名: 愛犬の友編集部 編 ・職業上でのペットとの関わり 普段犬猫の診察をしています。 飼育放棄や動物愛護センター収容の犬猫の保護譲渡活動をしています。 ・飼っている動物 シーズー ・ペット歴 ハムスター、うさぎ、ハリネズミ、犬(シーズー、ヨークシャテリア) ・ペットへの想い 18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。 ペットとその家族のサポートをしたい、相談に的確に応えたい、という想いから、トリマーとして働きながら、獣医師、ドッグトレーナーになりました。 現在は東京でペットのためのトータルケアサロンを経営。 毎日足を運べる動物病院をコンセプトに、病気の予防、未病ケアに力を入れ、気になったときにはすぐに相談できるコミュニティースペースを目指し、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護士、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。 プライベートでは一児の母。 愛犬はシーズー。 家族がいない犬の一時預かり、春から秋にかけて離乳前の子猫を育てるミルクボランティアをやっています ・ペットに関するエピソード シーズー2頭、ヨークシャの全部で3頭の多頭飼いをしていました。 2頭は天寿を全うし、今はシーズーの澪(みお)が1頭です。 動物を飼育する習慣のない家庭に育ちましたので、この仕事に就こうと決めた時に初めて犬を飼いました。 犬初心者からトリマー、トレーナー、獣医と、飼い主目線で自分の愛犬に必要なスキルを身につけました

続きを読む

ライタープロフィール

臼井 京音 Kyone Usui

臼井 京音 Kyone Usui

フリーライター、ドッグジャーナリスト 【経歴】 日本文学を専攻しバックパッカーもしていた大学卒業後、旅行ガイドブックの編集プロダクション勤務を経て、フリーライターに。30代前半でオーストラリアにドッグトレーニング留学をしたのち、現在はドッグジャーナリスト。 2007年から2017年まで東京都で“犬の幼稚園Urban Paws”の園長&家庭犬トレーニングインストラクターとしても活動。 東京都中央区 動物との共生推進員。 【執筆歴】 小学生時代から愛読していた雑誌『愛犬の友』をはじめ、多数の書籍や媒体で犬をはじめペットに関する執筆活動を行う。Webサイト「ニッポン放送ニュースオンライン」にて『ペットと一緒にby臼井京音』連載中。 著書:タイの犬の写真集『うみいぬ』、『室内犬の気持ちがわかる本』 これまでの執筆・編集歴は、毎日新聞の「臼井京音の幸せ犬ぐらし」連載コラム、AllAbout「犬の健康」、『週刊AERA』、季刊誌『BUHI』、書籍『フレンチブルドッグ生活の家計簿』、書籍『きみとさいごまで』、書籍編集『愛犬をケガや病気から守る本』、書籍編集『最新版 愛犬の病気百科』など。 【ペット歴】 小学生時代からシマリス、カメ、ミジンコ、カエル、ハムスター、メダカ、最初の愛犬ヨークシャー・テリアなどと生活し、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らしています。 室内外で保護犬やブリーダーから迎えた犬を多頭飼育していた祖父母や、獣医師の叔父、シャム猫を溺愛していた祖母の影響で、生まれた時からずっと動物に囲まれてきました。人と動物のよりよい関係を願い、日々取材と執筆を行っています。

続きを読む

編集部のおすすめ記事

今週の「ライフスタイル」記事ランキング